宮内庁の公式サイトには、「天皇皇后両陛下のご日程」というページがある。開けばわかるが、休日はほとんどない。2月11日には心臓の精密検査で入院されるなど、お身体には相当の負担がかかっているはずだ。皇室ジャーナリストの神田秀一氏が、国民が心配する天皇のご体調と、両陛下の健康を支える仕組みについて解説する。
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1月下旬、東京都内で開かれた国立がん研究センターの創立50周年記念式典に出席された天皇陛下は、「がんを患う者の一人として、今日の医療の恩恵を深く感じています」と挨拶されました。その表情、顔色からは体調不良やお身体の具合が悪い様子は見受けられませんでした。
ただ、薬で治療中だった心臓の冠動脈の狭窄で、散策や軽い運動の際に心臓を動かす筋肉に血液が十分に行き渡らない状態になる場合があることがわかり、2月に検査入院されることになりました。78歳というご高齢であり、大変心配されます。
昨年、両陛下は東日本大震災の被災地を巡幸され、私もその一部を取材しました。報道陣の取材場所として決められた位置からでは、天皇陛下の表情にお疲れは感じられず、足取りもしっかりしていました。
ところが、お見舞いの後、車と自衛隊のヘリコプターなどで御所へ戻られた天皇陛下の様子を知る側近は、
「どっとお疲れが出たのか、苦悶の表情を浮かべていらっしゃった」
と語っていました。表では気丈に振る舞っていても、どうしても疲労がたまってしまうのでしょう。その後、秋に入院されたのはご承知の通りです。
天皇陛下のご体調で心配なのは、やはり2003年1月に全摘出手術を受けられた前立腺がんに関するものです。9年が経過した今も1か月に1度、ホルモン療法を続けておられます。ただ、この治療の副作用として、骨密度が低下することが挙げられます。天皇陛下も骨粗鬆症(こつそしょうしょう)に近い状態になっているといいます。
もうひとつ懸念されるのは前述の心臓です。狭窄が発見されたのは昨年2月ですが、今回あらためて冠動脈造影検査を受けられることになりました。「粥腫(じゅくしゅ)」と呼ばれるお粥のようなドロドロした脂肪の塊が血管の壁に張り付いている状態だという報道もあります。進行すれば血管がつまる恐れがあります。
そうなると、カテーテルによる治療や動脈のバイパス手術といった選択肢が考えられるでしょう。ただ、ご高齢でご公務が多忙である陛下にとって大きな手術は難しいですから、悪化しないことを祈るばかりです。
体力の衰え、健康不安が心配されるのは、陛下と年齢が1歳しか変わらない皇后さまも同じです。
2007年3月には、腸壁からの出血の痕跡がみられ、1年後には「胃食道逆流症」との診断が出ました。
昨年は、以前から患っておられた頸椎症性神経根症による痛みが出て、7月に一部の日程を取りやめに、9月にも再発して北海道への行幸啓(ぎょうこうけい)を中止されています。
10月にも右足ふくらはぎの痛みが出て、下腿筋膜炎と診断。今年初めにも御所内の散策で右足首を捻挫されています。気を遣うことが多いからか、近年は神経系の体調不良が多いように見受けられ、大変心配されます。
※SAPIO2012年2月22日号