役人天国といわれる日本でその頂点に立つのが国会議員だ。国会議員の歳費(給与)は、月給・ボーナス合わせて年間2106万円。これとは別に、年間1200万円の「文書通信交通滞在費」支給される。しかし、実際は、JRの無料パスや無料航空券の支給を受けられるなど、交通費も通信費も滞在費も税金でまかなう仕組みを作り上げてきた。安心して住宅ローンの返済にあてられるわけである。
そのうえ、公設秘書3人まで給料は国費負担で雇われる。ある代議士の事務所では、中堅の政策秘書約750万円、ベテランの第一秘書約1050万円、ベテランの女性第二秘書約500万円で給料合計2300万円に達する。仕事は議員のスケジュール管理や雑用、家族の世話までやらされる事務所が多い。税金で雇ったお手伝いさんのようなものなのだ。オークションにいそしむ首相秘書官は、秘書に売れた商品の発送までさせていた。
小選挙区を持たない比例代表の代議士や労組出身など参院の「職域代表議員」の事務所は、選挙対策すらしないから開店休業状態だ。
だから参院選挙まで1年を切る頃になると、議員会館では不思議な現象が起きる。引退を決めた議員の事務所からほとんど人がいなくなるのである。
「公設秘書全員を早めに解雇して、身内を名義だけ第一秘書や第二秘書にするわけです。別に仕事を持っていてもいい。選挙もないし、引退となれば党の役職からも外れるから事務所に来なくてもいい。そうして秘書給与をせっせと貯め込む。歳費と文書通信交通滞在費、2人分の公設秘書給与などで1年あれば5000万円くらいになる。それを退職金がわりにするわけです」(民主党ベテラン秘書)
そんな“シロアリ議員”はさっさと辞職させるべきだが、議員の役得は引退しても続くから始末に悪い。
10年以上、議員を務めたベテランには議員年金がつく。これは月額約10万円の保険料を最低10年間払えば引退後65歳から毎月約35万円の年金を受け取れるもので、公的年金(厚生年金や国民年金、公務員年金)を受給する人でもプラスアルファで満額もらえる。さすがに批判を浴びて2006年に廃止が決まったが、その時点で在職10年を超えていた議員はいまも受給資格を持つ。
例えば岡田克也・副総理の場合(2006年当時は在職16年だった)を試算すると、引退時に約1620万円(払い込んだ保険料の8割)の一時金をもらうか、65歳から月額約38万円の年金を生涯もらうかを選択できる。たった16年の保険料納付でこの役得を得た男が、国民には「年金がほしいなら、もっと増税するぞ」と脅しているのだから、もう批判する言葉も見つけられない。
ちなみに、基準では中曽根康弘・元首相(在職56年)は年間741万円、塩川正十郎・元財務相(在職33年)は601万円になるが、年金以外の収入がある場合は減額され、2人とも現在の受給額は半額程度だ。
※週刊ポスト2012年2月17日号