「地方の主権」などとよく言われるものの、地方は中央に補助金の要請をすることも多い。そんな状況に対し、経営コンサルタントの大前研一氏が一喝。以下は、大前氏の主張である。
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そもそも日本の財政政策は田中角栄以降、それまでの歳入・歳出均衡型から歳出優先型へ大きく舵を切った。まず公共事業ありきで、歳入は後からついてくる、という発想が当たり前になった。それが成長期には地方を豊かにして、いわゆる「国土の均衡ある発展」を推し進めたという面もあるが、結果的に地方と国の関係が非常に歪み、地方が国に予算をねだるようになって、地方の自立機能が失われた。
かくして日本中の地方自治体が、国家破綻を加速させる「要求団体」と化してしまったのである。
その象徴が、東京電力福島第一原子力発電所事故を理由に「18歳以下の医療費無料化」を野田佳彦首相に求めた福島県の佐藤雄平知事だろう。日本は国の借金が1000兆円に達してデフォルト(債務不履行)の秒読み段階に入っているというのに、自治体にはその危機感が全くないどころか、それを早めるようなことを平気で要求しようというのである。
福島をはじめ被災地の復興支援を進めることが、政府の最優先課題であることは言うまでもない。しかし、だからといって、福島に住む子供たち全員の医療費を無料にしろというのは、明らかに筋が違う。
今、日本の地方が膠着(こうちゃく)、閉塞、停滞している原因の多くは、こうした地方の依存体質にある。いくら地方分権だの地域主権だのと叫んでも、「経済的な自立なき自治はない」ということを、地方は肝に銘じるべきである。地方自治体は、いつ折れてもおかしくないほど細くなった国の脛(すね)をかじるのではなく、「自分の財源は自分で賄(まかな)う」という発想とシステムに転換しなければならないのだ。
※SAPIO2012年2月22日号