1月5日に築地市場で行われた初競りでは、青森・大間産のマグロ(269kg)が1本5649万円という過去最高値で競り落とされた。競り落としたのは、寿司チェーン『すしざんまい』。社長の木村清さんは、TVや新聞を中心としたメディア報道で一躍有名になった。
この木村さんは、自衛隊を経て水産業へと入るという、かなりユニークな経歴の持ち主。寿司職人の道ではなく、経営者としての道を選び、全国46店舗の一大寿司チェーンを展開するいまも、寿司を握ることはあまりない。
木村さんの根底にあるのは、“もったいない”の心。おいしい食材は無駄にせず、全部生かしたい。そのための努力が報われ、事業はさまざまな方面へ拡大した。しかしバブルが崩壊すると、銀行倒産のあおりを受けて一時は90もあった事業を整理せざるをえなくなる。
また一から出直しになってしまった木村さんだが、家族や友人知人に支えられ、築地場外で1997年、『喜代寿司』を始める。当時、200万円の資金で始めたこの店は、瞬く間に1か月の売り上げが1000万円となった。木村さんの奮闘ぶりを見ていた築地の地主さんから「もっと人を集めて築地を元気にしてください」との言葉を受けて、2001年に24時間営業の『すしざんまい本店』を開き、いまや全国に店舗を展開するまでになった。
木村さんがいちばん好きなネタはマグロ。“マグロ大王”と称され、世界中に釣りに出掛け、解体ショーも実演する。
2003年にキューバまで赴いて解体をお披露目した際には、カストロ前議長もその場にいたと報じられた。そのときの縁でカストロ前議長の息子のアントニオ氏(キューバ野球連盟副会長)と出会い親交を深めアントニオ氏が来日するときには必ず『すしざんまい』を訪れるほど。さる1月13日には、キューバ大使館主催のパーティーで、政治家や歌手など約200人の前でも解体ショーを実演した。
このように、マグロは世界でも特別なものなのだ。
※女性セブン2012年2月23日号