橋下徹市長と職員労組との「大阪市戦争」がヒートアップしている。これからどうなっていくのか。ジャーナリストの武冨薫氏がバトルの最前線を追った。
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特に市営バス、水道・清掃事業といった現業部門は、非常に手当が厚く、給料が民間の同じ業種に比べて2倍以上高いケースはざらだ。そうした行政・組合一体化で無駄な事業が増え、行政の肥大化を招いてきた。
しかも、それをチェックすべき議会も機能していない。ある中核市の元市長は、「ベテランの市議ともなると、職員の“採用枠”を持ち、人事課に口を利いて採用をもちかける。謝礼の相場は300万円とも言われる。そうした情実採用をなくすのに苦労した」と明かす。職員の採用から情実が横行し、行政・組合・議会、さらに出入り業者まで一体となった既得権集団が各自治体で形成されている。
そうした既得権の源泉が、自治労=職員組合の政治力であり、改革しようという首長が出現すると、組合をあげた選挙運動で落選させることは鹿児島県阿久根市の竹原信一・前市長のケースでも明らかだ。
橋下氏は施政方針で、「特定の団体や市民への補助やサービス提供が続けられ、既得権となって固定化していましたが、選挙で市民はこれに『NO』を突きつけました。既得権を破壊することが私に与えられた使命だと思っております」と語った。それに従って、「破壊」のための“爆弾”を次々に繰り出している。
それに対して、反橋下陣営の動きは鈍い。労組の支援を受けた平松邦夫・前市長の後援会を母体に、橋下市政を監視するシンクタンクの旗揚げを準備しているくらいだ。
「橋下市長に市民の支持が高いうちは、抵抗するだけ労組が批判を浴びる。橋下氏は国政に意欲があるから、早く国政に送り出して大阪の自治を取り戻すほうが早道だ。それまでは橋下改革のマイナス面を徹底的に検証する」(市労連のベテラン組合員)
まずは攻めよりも守りを固めようとする労組側だが、橋下氏サイドの包囲網は、着々と狭まりつつある。
※SAPIO2012年2月22日号