中国外交筋によると次期首相候補に挙げられている李克強・副首相が1月、2月中のロシア公式訪問を計画し、中国外務省経由でロシア政府に対し、プーチン首相とメドベージェフ大統領に会談を申し込んだが、プーチン首相が「3月の大統領選挙で忙しい」と突っぱね、メドベージェフ氏も李副首相との会談をすげなく拒否していたことが分かった。
ロシアの最高指導者が友好国である中国の最高指導者との会談を断るのは極めて異例で、中国側はロシア側に理由を問いただすなど態度を硬化し、一時的に中露間に緊張が走ったという。プーチン氏が会談を断った理由について、ロシアでは「大ロシアを意識した」とか、「中国軽視の現れ」、あるいは「次期首相候補とはいえ、李克強氏があまりにも小物すぎた」などとの憶測が乱れ飛んでいる。
李副首相といえば、胡錦濤国家主席の腹心で、今年秋の中国共産党の第18回党大会で、最高指導部メンバーの党政治局常務委員に再選されることは確実視されている。さらに、来年3月の全国人民代表大会(全人代)では首相に選出され、その後10年間同職を務めることになる。
それだけに、大統領当選が確実なプーチン氏にとってみれば、今後10年間、付き合うことになる中国の最高指導者に、いまのうちに、顔見知りになっておけば、中露両国間の関係も深まろうというもの。
とはいえプーチン氏は、すでに、大統領も経験し、首相を経由して、さらに大統領に返り咲こうとするなど、死ぬまでロシアの最高指導者として君臨することを望んでいる人物。それだけに、中国共産党の最高指導部の一員であるとしても、「李克強氏は56歳と若くて、小物に見えたのではないか」とモスクワの外交筋は指摘する。
実際の話として、中国外交筋によると、李克強氏のプーチン、メドベージェフ両氏との会談には、明らかに“下心”があったといわれる。
実は、李克強氏のライバルで、秋の党大会で党総書記に選出されることが確実視されている習近平・国家副主席は今月14日から米国公式訪問を開始し、16日にはホワイトハウスでオバマ米大統領と会談する予定だ。
ほぼ半年後には中国の最高指導者になる習近平氏とオバマ大統領との米中首脳会談は世界中のマスメディアが華々しく報じるのは間違いない。李克強氏としては、オバマ大統領に引けをとらない世界的な指導者であるロシアのプーチン首相、あるいはメドベージェフ氏のいずれかと会談すれば、習近平・オバマ会談にも見劣りはしないだろうという思いがあったというのだ。
プーチン氏は李克強の下心を見透かしたといえるだろう。国際外交には下心はつきものだが、今回の会談拒絶事件は、やはり個人的な下心は、名うての指導者には通用しないという例の見本だろう。