「感謝感激、カンボジア~ン」――。別府大分国際マラソンで自己記録を7分あまり縮める2時間30分26秒を叩き出した猫ひろし(34)は大はしゃぎだった。
カンボジアに帰化してまで狙うロンドン五輪出場。
「あとは3月の発表を待つだけ。6月にプノンペンでハーフマラソンを走り、五輪でのマラソンに向けて調整予定です」(猫の関係者)
カンボジア五輪委員会が設けていた「2時間31分前後」のハードルを超えたため、猫ひろしの周囲でも内定ムードが漂う。
だが、五輪委員会がレース後に、
「五輪代表には2時間25分程度の記録を期待しています」と突如、ハードルを上げるような発言をしたのは気になるところだ。
一体、どういう意図があったのか。プノンペンのカンボジア五輪委員会に取材をすると、「猫ひろしさんが記録を更新したのは知っています。基準を2時間31分から25分に変えたのは事実ですが、まだ誰が走るかはっきり決まったわけではなく、3月に開かれる会議でじっくり検討します。猫ひろしさんには走る資格はあります。全く問題はありません」(広報部)
と、あくまでもまだ何も決まっていないと強調した。
だが、カンボジア最大の英字紙『プノンペンポスト』のスポーツ記者の見方は非常に厳しい。
「猫ひろしさんはこの半年、こちらでもかなり話題になっています。しかし、カンボジア人は誰も、彼に『カンボジア代表になってほしい』とは思っていません。ライバルといわれているヘム・ブンティン選手は北京五輪にも出場し、カンボジアでは英雄として尊敬されています。
たとえ猫さんがブンティン選手の記録を塗り替えても、所詮は日本人です。五輪委員会はそうした世論を感じて、猫さんが五輪に出場できないように仕掛けているんですよ」
しかも、猫ひろしが狙うのは、カンボジアの選手が国際陸連が設定した五輪参加標準記録B(マラソンでは2時間18分0秒)をどの陸上種目でも破れなかった場合に、男女一人ずつ、いずれかの種目で出場できるという特例枠。猫ひろしが出場すれば、他のカンボジアの男子陸上選手は誰も出場できなくなる。こうした事情を知れば、カンボジアの五輪委員会が急にハードルを上げたのも納得できる。
※週刊ポスト2012年2月24日号