野田佳彦・首相は3年前の街頭演説で、血税をすする役人をシロアリと批判した。この演説はYouTubeなどでも繰り返し再生された。ただ、この国を食い荒らす害虫は公務員だけではない。国会議員や地方議員も目に余る。
地方議員は、国費を食べるシロアリ国会議員と同様に、自治体財政を食う「シロアリ議員」なのである。
なかにはシロアリ退治に乗り出す首長もいるが、いずれも血みどろの戦いだ。
橋下徹氏が率いる地域政党「大阪維新の会」は、2011年6月、府議会に議員定数の削減案(定数109→88)を提出して可決した(市議会にも提出したが、過半数を握っていなかったため否決された)。
また、河村たかし・名古屋市長は、市議会に対し、定数を75から38に減らし、報酬を1600万円から800万円に半減させる提案を行なった。報酬半減は5回の否決と議会リコールを経て成立したが、議員定数削減は未だに実現していない。その他の地域でも、京都市議会で地域政党「京都党」が定数69を9減らす請求を行なったが、反対多数で否決された。
地方議会で定数削減論議に火がついた理由は何か。
1つ目は、地方自治体が財政危機に直面しているからだ。2007年に北海道・夕張市が財政再建団体になった(すなわち破綻した)ことは記憶に新しいが、その他の自治体でも赤字が深刻化し、行政サービスが低下するケースは山ほどある。それら自治体では議員報酬など、地方議会の運営にかかる経費が重い負担になっている。
2つ目の理由は、地方議員の仕事の実態を見れば自ずとわかる。鹿児島・阿久根市で議員削減を提案した経験を持つ竹原信一・前市長がいう。
「阿久根市は人口2万人に対して議会の定数は16人。多すぎると感じて、12人や6人に減らすという削減案を提出しましたが、保身を考える議員たちの反発を受けて、いずれも否決されました。
阿久根市では議会が開かれるのは年に30日ぐらい。1日の拘束時間も長く見積もって4時間、短くて30分程度なので、年間100時間ほどしか働いていない計算になる。
ではその短い時間で猛烈に仕事をしているかというと全然違う。16人の議員の仕事ぶりを観察すると、2年間で一般質問を1回しかしなかった議員が2人、1回もやらなかった議員が3人もいました。年に数回ある採決の時に立ち上がって、そして座る。彼らの仕事はこれだけ。“膝の屈伸運動”をするだけで年収400万円とはひどいものです」
※週刊ポスト2012年2月24日号