大地震は本当に来るのか? もうその問いかけは何の意味もなさない。M7級の首都直下型地震は間違いなくやってくると考えて、対策を施すしかない。防災グッズの準備も大切だが、直下型の場合は家の倒壊に備えるべく、地盤のチェックも極めて重要となる。
内閣府はホームページで「表層地盤のゆれやすさ全国マップ」を公開している。算定には建築工事のボーリング調査で得られた地盤データなどを利用。日本全国を1平方キロメートルに区切り、どの地域がどれくらい揺れやすいかを7段階に色分けしている。
これをみれば都内の特徴は、東京湾付近や東部の下町ほど揺れがひどく、逆に西へと山陸部に向かうほど揺れにくいことがわかる。
揺れやすいとされたのは、中央区、港区、台東区、墨田区、江東区、品川区、大田区、北区、足立区、葛飾区、江戸川区の12区の一部で、とくに都内の下町低地は、地下60メートル付近まで沖積層が連続する軟弱な地盤のため、評価は低い。武蔵野学院大学特任教授(地震学)の島村英紀さんが解説する。
「隅田川と荒川から東の江戸川区、荒川区、墨田区はとくに注意が必要な一方、新宿区や世田谷区などは比較的あまり揺れないとされます」
逆に山間部は揺れにくいことがみてとれるだろう。この地図は全国規模でインターネットで公開されているので、一度チェックしておきたい。
ネットで公開されている情報で便利なものをもうひとつ押さえておこう。独立行政法人・防災科学技術研究所が「地震ハザードステーション」(http://www.j-shis.bosai.go.jp/)というサイトで公開している地図だ。
住所や地名などを入力すると揺れやすさを調べることができる。およそ250平方メートル単位で細分化された土地の揺れやすさを「表層地盤増幅率」という数値でみることができる。「1.5」を超えれば注意を必要とし、「2」を超えるようであれば、強い揺れへの警戒が必要だ。
やはり、東京は青梅市やあきる野市、羽村市など内陸部が揺れにくく、荒川区や葛飾区、江戸川区といった臨海地域で揺れやすい。
さらに、地震問題に詳しい不動産コンサルタントの平野雅之さんが注目する揺れやすい場所が大型河川沿いに存在する「後背湿地」だ。後背湿地とは大型河川のそばに自然とできた堤防の背後にできる湿地のこと。洪水などであふれ出た水が低地に残り、そこに土などが堆積することで、平坦で軟弱な地盤が長い時間をかけてゆっくり形成される。当然、こうした地盤は地震に弱い。
「実際、東日本大震災において都内で唯一、震度5強を記録した足立区伊興は後背湿地で、過去に利根川による洪水被害を受けたことがあります。足立区だけでなく、昔、多摩川の河川敷だった二子玉川や川崎の溝ノ口など首都圏には後背湿地が多く、地震の際には大きな揺れが予想されます」(平野さん)
後背湿地のみならず、都内はもともと海だった地域が多い。埋め立て地もまた軟弱な地盤の代表的な場所だ。
「東日本大震災で震度4だった大手町の気象庁周辺は大昔、海だったとされます。数百年前でさえ日比谷入江の湿地に過ぎなかった大手町周辺が都市整備されたのは、ようやく江戸にはいってからですが、数千年以上の長い時間から見れば埋め立てられて間もない土地のため、地盤が脆弱で大地震に弱い。東京にはこうした地域が多く、過去の地震で大きな震度を記録したエリアの大半は大昔、海であったと考えられます。とくに江東区や江戸川区には埋立地が多いですね」(平野さん)
一方、気象庁から約1.8kmしか離れていない千代田区麹町が震度2にとどまったのはなぜだろうか。
「麹町は硬い地盤を有する武蔵野台地の東縁に位置します。海だった大手町と違い、地盤が堅固なため揺れが小さかったのでしょう」(平野さん)
※女性セブン2012年2月23日号