かつて皇室や宮家には生まれた子供を里子に出す習慣があったが、戦後、里親制度は廃止された。天皇皇后両陛下は「帝王教育」をどうなさったのか。皇室ジャーナリストの久能靖氏が解説する。
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天皇皇后両陛下は皇太子殿下を始めとする3人のお子様をご自分の手で育てられたが、しつけは相当厳しかったと聞いている。一例をあげると、子供時代は誰でも牛乳が嫌だとか、生野菜は食べたくないとかいった好き嫌いが当然ある。美智子様は浩宮様(現皇太子)の好き嫌いを治すために、あえて嫌いなものを食卓に並べ、食べ終わらない限り食堂から絶対に外に出さなかった。
一人食堂に取り残された浩宮様は、時に涙を流してお食べになったそうだ。こうして浩宮様は食べ物の好き嫌いを克服されたという。なぜここまでおやりになるかというと、天皇は国賓として海外にお出かけにならなくてはいけない。その際、出てきた料理に対して好き嫌いは言えないからだ。これも将来を見据えての「帝王教育」の一つと言える。
こうして立派に成長された皇太子殿下は非常な勉強家だという。側近が特に舌を巻いて感心するのは歴代の天皇の事績だという。この天皇はどんな天皇で、どんなことをなさったかを、とてもよくご存じなのだそうだ。自分で勉強されて疑問が生じると、外から専門の学者を招いて御進講を受けられることもめずらしくないという。将来、天皇になられるご自覚が、皇太子殿下に強くあるのだと思う。
※SAPIO2012年2月22日号