野田佳彦・首相が役人をシロアリにたとえた3年前に演説が話題になったが、シロアリは役人だけでなく、厚遇を享受する国会議員や地方議員も同じだ。年間100日に満たない仕事で多額の議員報酬を得て、議会や委員会への出席で日当が、このほか政策の調査、・研究のために政務調査費も支給される。
ろくに仕事もせず、破格の待遇を享受する地方議員が3万6000人もいる。なぜシロアリ地方議員は増殖してしまったのか。
日大法学部教授の甲斐素直氏(憲法学)がいう。
「市町村議の定数は地方自治法で定められている。これは戦前の市制、町村制時代に定められた議員定数を引き継いでいる。ただし、戦後まもなく地方自治法を検討したGHQは、当時からアメリカの地方議会に比べて日本の地方議員は多すぎると意見していた」
例えば、人口220万人の名古屋市の議員定数は75人。同規模のアメリカ・ヒューストン市はたった14人で、5分の1以下しかいない。人口380万人のロサンゼルス市でも15人だけだ。河村たかし市長が38人に減らすことを提案して拒否されたが、それでも甘すぎるといっていい。
日本の地方議員は報酬面も恵まれすぎている。世界の常識でいえば、無給でも十分なのだ。
アメリカでは報酬を得ているのは大都市の専門職議員だけ。通常規模の都市ではせいぜい交通費が実費で支払われる程度だ。
フランスでは基礎自治体はコミューンと呼ばれる。コミューンは平均1600人程度の住民で構成され、そこで選ばれるコミューン議会議員は自治体の財政に負担をかけないように無報酬が原則。人口10万人以上のコミューン(全コミューンの約0.1%)に限って必要経費を支払う制度をとっている。
ドイツでも地方議員は地方自治法によって「名誉職」と規定され、少額の報酬と手当しか支払われない。イギリスでも同様だ。
※週刊ポスト2012年2月24日号