いくら何でもウソだろう、と思うのが当然だが、食事をまったくせずに生きることも不可能ではないかもしれない。実際にNASA(アメリカ航空宇宙局)が研究したケースが存在する。
インド人のヒラ・ラタン・マネク氏は2000年、インド医療協会の21人の医師の監視のなか、411日間にわたって水だけで生活。この研究に興味を持ったNASAが2001年に彼を招待した。もし人間が何も食べずに生きられれば、長い宇宙旅行の間も宇宙食は必要なくなることになるからだ。
そしてマネク氏はNASAの科学者の前で130日間の断食に成功。彼は「水分と日光だけで生きている」と語ったが、多くの一流の科学者たちが、それを目の当たりにしたのだから衝撃的だ。
日本にも、「不食の人」が実在していた記録がある。1863年、庄内藩(現在の山形県鶴岡市)に生まれた長南年恵氏は、20歳の頃から水とわずかなサツマイモのみで生活。空気中から水を取り出し、「神の水」として病人に提供し、治療していた。ところがこれが「詐欺行為」にあたるとして逮捕される。監獄に入れられた長南氏は、勾留中の60日間、一切食事をとらず、トイレにも行かなかったという。結局、裁判で無罪判決を受けている。
似たような「不食」の話は世界中にある。すべてデタラメだといえるだろうか。
不食の理由として「体内微生物原因説」なども推測されているが、それだけではない。
動物界では、ウミウシは藻を食べることで藻のDNAを取り込み、自ら光合成を行なえるようになって日光だけで生き続けていることが研究で判明している。マネク氏が、太陽を毎日1時間ほど凝視していることから考えると、「光合成説」もあり得るのかもしれない。
※週刊ポスト2012年2月24日号