スポーツや芸術の世界で多くの日本人が「世界一」を獲得しているのは周知の事実だが、ビジネス界にも胸を張れる世界一がある。
「日本には創業100年以上の会社が5万社以上あり世界一。創業200年以上の企業も3000社を超えています。2位はドイツの約1560社、3位はフランスの約330社で、各国と比較しても段違いの多さです」(法政大学大学院の久保田章市・教授)
著書『百年企業、生き残るヒント』(角川SSC新書)で多くの長寿企業の経営者を取材した久保田教授は、その秘訣として「伝統的な“家”制度の存在」「創業者一族による長期的視点での経営」「伝統の継承と革新」を挙げている。
「日本では“家”を存続させるために、血縁関係のない優秀な者が養子縁組をして後継者となる。これは世界的に見ても珍しい制度です。他国の同族企業は血縁にこだわるが、日本の経営者は柔軟性に富んでいる」(久保田教授)
同族経営を重んじる韓国に長寿企業が少ないのは、他人を経営者に迎えることが稀だからかもしれない。久保田教授が続ける。
「日本の老舗企業の経営者は、“家”という概念があることから長期的な経営ができる。5年前後で入れ替わるサラリーマン社長は、任期中に成果を出そうと焦って目先の利益を追い求めてしまうのと対照的です。また、日本企業には顧客のニーズを重視する文化があるため、伝統に重きを置きつつ変化にも柔軟に対応できるのです」(久保田教授)
「血」ではなく「家」。日本企業というと、技術はあるが経営は二流というイメージがあるが、実は欧米とは全く違うタイプの一流経営者がたくさんいるのかもしれない。
※週刊ポスト2012年2月24日号