NHK連続テレビ小説『カーネーション』。1月28日の放送では視聴率28%を叩き出したが、その翌週には20%台へと5%も低下してしまった。
そんな同ドラマだが、ファンを戸惑わせているのが、主役交代の報。1月末、NHKは尾野真千子(30)が演じてきた主人公の糸子役を3月3日放送分から、夏木マリ(59)に交代することを発表し、それがさまざまな議論を呼んでいる。
当初16%そこそこだった視聴率を、現在の20%台超にまで押し上げた大きな要因が、尾野の好演といわれるだけに、“いったいなぜ?”の声しきり。
「前作までの『おひさま』や『てっぱん』『ゲゲゲの女房』もそうでしたが、主人公はきれいでさわやかというのが朝ドラの定番だったのに対し、『カーネーション』の糸子は“岸和田の姐御”。その異色の役になりきっている尾野の演技が、視聴者をぐいぐい引っ張ってきたんだと思います」(映画評論家の町山智浩さん)
若手女優の登竜門ともいわれる朝ドラのヒロイン。今回の大役を務めるまでにも、尾野は各所でその実力を示してきた。
中学3年生のときに、映画監督の河瀬直美さんにスカウトされ、カンヌ国際映画祭でカメラ・ドールを受賞した映画『萠の朱雀』で主演デビュー。その演技力が高く評価され、同作でシンガポール国際映画祭主演女優賞を受賞。同じく主演を務めた河瀬監督の『殯の森』が、2007年にカンヌ国際映画祭でグランプリを獲得したことから、一気に注目を浴びるようになった。
「昨年放送されたドラマ『名前をなくした女神』(フジテレビ系)では、気が小さくて話ができないという、糸子とは全く違うタイプの女性を演じていましたから、今回の糸子役で、その演技の幅の広さに驚かされました」(町山さん)
何事にも真っ正面からぶつかり、時には上品とはいえない舌打ちや、暴言も飛び出すのが糸子の役どころ。
「かわいらしく見える糸子が、娘たちや、ほっしゃん。(40)演じる北村達雄にドーンと大胆なことをいったりするというギャップが痛快なんですよね」(主婦・44)
それだけに、今回の交代に疑問の声も挙がっている。NHKでは主演交代を「既定の方針」(NHK広報担当者)と説明しているが、
「尾野さんが、晩年までやるのだとてっきり思ってましたから、何か問題があったのかとつい勘ぐってしまいました」(エッセイストの青木るえかさん)
「私は尾野さんに最後までやってほしかったと思いますね。夏木さんのお芝居のうまさはわかってますが、これだけ支持されているんだから、できれば最後まで尾野さんにチャンスをあげてほしかったなと思います」(前出・町山さん)
一方では、
「糸子のモデルである小篠綾子さん(享年92)は、ファッション業界ではゴッドマザーと呼ばれ、晩年まで豪快に生きた女性。若い尾野が演じるより、実年齢に近い夏木が演じたほうが、ドラマに深みが出るという判断は間違っていない」(ベテランの演出家)
という声もある。今回のキャスト変更、果たして吉と出るのだろうか。
※女性セブン2012年3月1日号