日本大震災以来、天皇、皇后両陛下は幾度も被災地をお見舞された。だが、直接のお見舞い以外にも被災地を支援する活動をされていた。
岩手県では去年の3月24日から、被災地の子供たちに絵本を届ける「3.11絵本プロジェクトいわて」という活動が行なわれている。これまでに全国から23万冊余りの絵本が寄せられ(今年1月4日時点)、「えほんカー」が被災地を回ってそれらを配っている。実はこのプロジェクトに皇后も協力されている。
プロジェクトの提案者であり、代表を務める末盛千枝子さん(70歳)は、絵本などを手掛けるすえもりブックスという出版社を経営していた。一方、皇后は児童文学に造詣が深いことで知られ、末盛さんの出版社から『橋をかける 子供時代の読書の思い出』『バーゼルより 子どもと本を結ぶ人たちへ』といった講演集を出版なさっている。そんなことから皇后と末盛さんは以前から親交があった。
末盛さんが話す。
「大震災からしばらく経った頃、皇后さまからお電話をいただき、このプロジェクトのことをお伝えしたところ、4月に2冊の絵本を送っていただいたのです」
『龍の子太郎』と『3月 ひなのつき』という絵本である。
「ここまでは何度もマスコミで紹介されたのですが、実は去年の12月にも2回、3冊ずつ送っていただいています。それ自体、大変ありがたいのですが、何よりもご本の選び方に、被災した子供たちに対する皇后さまの実に細やかなお心遣いが感じられるのです」
12月に送られてきた絵本は、最初が『おおきなかぶ』『わたしとあそんで』『しずかに! ここはどうぶつのとしょかんです』。それぞれ、みんなで力を合わせていくことの大切さ、生きとし生けるものが共感し合うことの素晴らしさ、本を読むことの喜びがテーマになっている。
「さらに素晴らしいのが次に送っていただいた3冊です。『しんせつなともだち』は、友だちへの思いやりや人を愛するとはどういうことか、『わすれられないおくりもの』はかけがえのない人を亡くした時、その悲しみをどう乗り越えていくか、を描いた物語。
そして『スーホの白い馬』は、少年が大切にしていた白い馬が悲劇に見舞われるが、形を変えてあとに残された人たちに力を与える、という物語。皇后さまがいかに深く被災地の子供のことを考えていらっしゃるかが感じられるようです」(末盛さん)
※SAPIO2012年2月22日号