人間ドックではX線撮影による肺がん検査、大腸がんの便潜血反応、肝がん、胆がん、腎がんの超音波検査などが実施されている。しかし、従来の腫瘍マーカーによる検査では、がん細胞が産生する成分を信号として捉えるため、ある程度進行しないと数値が出ないので早期発見が難しい。
そこで感度がよく早期発見が可能で、患者の負担も少ない検査として開発されたのが、AICS(アミノインデックッスがんリスクスクリーニング)だ。身体のタンパク質を構成する約20種のアミノ酸の濃度を測定・解析し、そのバランスの変化からがんの可能性を調べる。
社会福祉法人三井記念病院・総合健診センター山門實所長に話を聞いた。
「昨年9月から12月まで76人を対象に検査したところ、人間ドックのがん検査では陰性だった2人が、高リスクのランクCと判定されました。一人は1センチの早期肺がんでしたが、前面からのX線検査では心臓の陰で見えず、側面からは脊椎に重なり発見できませんでした。
もう一人の大腸がん発見のケースはポリープ内がんで、便潜血反応では陰性だったのをかなり早期に発見できました」(山門所長)
がんリスクありと判定された人のみがCTや内視鏡などの精密検査で確定診断をするため、医療被曝の回避や内視鏡検査の苦痛軽減が可能だ。
また、良性腫瘍とがんの区別も数値で判別できる。例えば、従来子宮体がんで実施されている検査では良性腫瘍とがんの区別が難しいが、AICSでは違う数値で表示されるため、明確に判定できる。
今後は超音波検査でも発見が難しい膵がんの早期発見ができるよう研究を進める予定だ。検査費用は1万8900円で、結果が出るまで1週間程度かかる。
(取材・構成/岩城レイ子)
※週刊ポスト2012年2月24日号