北京テレビが放送する鑑定番組は、日本の「なんでも鑑定団」のような番組だが、その激しさは異質だ。鑑定した物がニセモノなら、その場で破壊してしまう。そして日本で約2000万円出して買ったという壺が、青ざめる持ち主の前で叩き壊される。美術品ブームに沸く中国で、いま何が起きているのか。ジャーナリストの富坂聰氏が解説する。
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中国ではここ数年、美術品のコレクションが話題である。中国のオークション市場はいまや7000億円ともいわれ、日本の約70倍に達するともいわれている。
美術品収集ブームを押し上げているのは富裕層を中心とした投資意欲で、金の高騰に続く美術品の価格高騰を招いている。
このオークションブームには裕福になった事業家が愛国心を燃やして海外に流出した書や画を買い戻すという行動も目立って見られたのだが、そのターゲットになったのが日本なのである。
ほとんどが80年代から90年代にかけて日本人観光客がまとめ買いしていったもので、持ち主の多くは本当の価値を理解しないままお蔵入りしているケースがほとんど。その書や画に買った時の100倍という意外な高値がつくことも珍しくないのだ。
だが、こうした中国の美術品コレクターの本当の狙いはここではない。実は日本には歴史的にも中国で国宝級の古美術品が大量に眠っていると考えられているからだ。
貴重な美術品が戦乱や王朝の交替のたびに破壊されてきた中国に比べ、保存の良い状態で受け継がれてきたという事情に加え、義和団事件後に軍の派遣をして以降から日中戦争の期間に持ち去られたお宝が日本にはたくさん眠っているとされているからだ。
この事実は概ね中国側も認めているが、問題はこの日本市場にもニセモノがあふれていることだという。事実、日本で見つかる中国の国宝級の美術品も約70%はニセモノだと考えられているのだ。
昨年には実際に日本から買って帰った古美術品がニセモノと発覚する事件も起きた。しかもテレビ番組のなかでのことだ。
北京テレビが放送する鑑定番組は、日本の「なんでも鑑定団」のような番組だが、その激しさは異質だ。鑑定に出した物がニセモノと判定されれば、その場で破壊されてしまうからだ。そして問題の骨董品は日本から約2000万円で買ったという。結果は見事に「ニセモノ」。壺は、青ざめる持ち主の前で叩き壊されてしまうというオチだった。