医療ミステリーを書き続けて大人気の仙川環さん(43)。このほど、風邪薬や花粉症治療薬、薄毛の治療薬などをめぐって、不妊の妻や美貌のカウンセラーなどの野心や愛憎、鬱屈などがはからずも露呈されていく、薬をテーマにした短編連作集『誤飲』(小学館)を上梓した。
そんな仙川さんは、小学校時代の4年間を父親の仕事の関係でニューヨーク郊外で過ごした経験を持ち、大阪大学大学院で生命科学を学び、新聞記者を経て作家デビューした。
「でも、将来、こうしたいというはっきりしたものがあったわけではないんです。これまで私が書いてきた主人公の女性たちは、頑張るタイプでしたけど、私自身はいい加減な人。あきっぽくて、せっかちで(笑い)。全然、華やかじゃないし、流されてきただけ」(仙川さん)
高校時代、つくば万博で生物科学に興味を持ち、大学時代は生物学を専攻した。このころ、外国のミステリー小説を読んで、ミステリーの面白さに目覚める。でも、作家を志すのはまだまだ先。
大学院に進み、生命科学の研究を続けるものの、研究者の道を選ばず、まったく別のことをやってみようと考えて新聞記者に。
「新聞記者としては、押しが強くなかったかもしれません。相手がいやだろうなと思うと、それ以上聞いたり書いたりできなくて…。結局、自分でも何をしたらいいのかまだわかりませんでした」
日本経済新聞社の科学部に4年。その後、異動になって時間ができたことから、中国語を習おうとした。
「ところが、学費が高いのであきらめて、たまたま見かけたカルチャーセンターの“ミステリーを書く”という講座に、なんとなくはいったんですけど、通いだしたら、面白くなってきたんです。そのときどきで流されて、たどり着いたところが、自分にいちばん合っている小説家だったように思います」
※女性セブン2012年3月1日号