「どげんかせんといかん!」と故郷の宮崎県のためPR活動に尽力した東国原英夫氏(54)が宮崎県知事を退任してから約1年。かげりが見え始めた“宮崎ブーム”に地元からは心配する声が上がっている。
東国原氏は、元タレントという知名度を活かして自ら“宣伝部長”を買って出て地元の食材や商品をアピールし、2007年の知事就任から2年間で約1500億円ともいえる経済効果を生みだした。しかし、昨年1月に河野俊嗣知事(47)にバトンタッチしてからは、東国原時代と比べて、全国的なPR効果はほとんど出ていないといっていいだろう。
以前は観光スポットとなっていた宮崎県庁への見学者数は、ピークとなった2008年度の42万3907人に比べ、河野知事が就任した2011年度は3万6475人と、約10分の1に激減した(2月14日時点の累計)。
「東国原前知事のときは全国から知事目当てに観光客が来ていました。観光ツアーにも県庁が組み込まれているほどでした。いまもそのようなツアーはありますが、観光客は随分減ったという印象です。団体客や、観光バスで来る人も減りましたね」と県庁の総務部担当者は語る。
全国的にブームになった宮崎産の商品にも影響が出ている。県庁に隣接している「みやざき物産館KONNE」では、2010年度の売り上げは6億1632万円、河野知事に替わった2011年度は3億5517万円で4割ほど減少した。
東国原知事の誕生にあわせて「神楽酒造」が販売を始め話題となった県内限定芋焼酎『東国原』は、ピーク時に比べて売り上げは半減。
「ブームのときには観光客の土産品として、特に空港やみやざき物産館でよく売れましたが、知事が辞めてからは、潮が引くようにさーっと売り上げが減りました。今後は、どうなるのか…」(神楽酒造の広報担当者)
宮崎が誇る県産品のマンゴーも、知事就任後のリーマンショックから景気の影響を受けて低迷気味。東国原前知事が就任した2007年度の平均価格は約4900円に上がったが、2008年度は約3900円に、2011年度は約2800円にまで下がった。
とはいえ、地元の関係者もただ黙ってみているわけではない。“脱東国原”の動きを進めている。東国原氏の似顔絵入りのご当地カレーや冷や汁、チキン南蛮などを宮崎で第1号として全国展開した宮崎市の食品会社「響」は、150品目中、100品目に東国原氏の似顔絵を入れていたが、知事交代とともに似顔絵を外した。
「ブームで3倍になった売り上げは一時、半分に減りましたが、当時に増えた取り引き先との人脈を生かして販売活動を行っています。いまではブームのころの売り上げに戻りつつあります」(同社の岩切邦光社長)
県では昨年10月、日向夏ミカンや地頭鶏などの県産品をあしらったマスコットキャラ「みやざき犬」を誕生させた。前出の「響」でも、“みやざき犬”のステッカーを商品に貼り、売り上げに好影響が出ているという。
観光面でも、県がさまざまな企画も打ち出している。今年の「古事記編纂1300年」にちなみ、『古事記』の舞台となった地方を全国的にPRしていくほか、パワースポットとして人気の高千穂や、縁結びで有名な青島神社にちなんだ旅企画も展開中だ。