現在、最も要介護者が多い年代は80代。つまり親や配偶者が70代なら、すでに介護の準備が必要になってくるということ。介護は人それぞれ、さまざまなやり方があるが、タレントの荒木由美子さん(52)は、自身の介護経験を語ってくれた。
荒木さんは23才で13才年上の湯原昌幸と結婚。「その2週間後から介護が始まりました」という。当時、66才だった義母は、糖尿病、高血圧、心臓肥大を患っており、それぞれを治療するために3か月に1回、入院を余儀なくされた。
「糖尿病ですから、家にいるときは、カロリー計算をした食事を3食すべて一緒に摂りました」
そのうち、認知症の症状も。
「ずっと台所に立って食事を作り、お義母さんの世話をして、ソファに座っている間もなかった。泣かない日はなかったですね」
息子の塾や習い事も始まる。義母を家にひとりでおいておけないので、一緒に車に乗せて移動した。
家族だけの在宅介護では自分たちもダメになってしまうと限界を感じ、夫の湯原が“人の手を借りよう”といったのをきっかけに、義母は79才で入院。自分の時間は徐々に戻ってきたが、今度は入院費が家計に重くのしかかっていた。
「息子の月謝とお義母さんの入院費で、月に50万円は出ていく。入院していた7年間のやりくりはけっして楽じゃなかった。今月どう乗り切るかをいつも考えていました。お義母さんは、だんだん穏やかになっていましたが、その日の気分で私が顔を見せないと反抗して病院の食事をしない。施設から電話がかかってくると、急いで面会に行ったこともありました」
片道1時間弱かけて病院に通う。あまりの疲れに、コンビニの駐車場に車を止め、うたた寝をしたこともあった。息抜きは幼稚園のママ友とのランチや、友人との真夜中の電話だった。そして86才で義母は死去。
「亡くなった顔を見たときに、私ができる介護は全部やった、とガッツポーズをしました」
自身の円形脱毛症や悪性腫瘍の疑いを乗り越えながらの介護は20年にも及んだ。そんな荒木さんからのアドバイスは、来るべき日のために、地域の老人施設を調べておくこと。
「介護の講演会に行くと、病院や施設に行くのを嫌がるお年寄り、特に男性のかたが多いという声を聞きます。普段から病院慣れをしておく、デイサービスやショートステイがどういうものかを知っておくといいと思います。
自分に時間というごほうびをあげて息抜きするのも大切。夫は私の本を読んで、“大変だったんだね”といってましたが、“もっと早くあのときにいってよ”と笑い合いました。夫婦仲がよかったから、介護も乗り切れたんだと思います」
※女性セブン2012年3月1日号