神奈川・茅ヶ崎市の小高い丘の上に建つ大豪邸からは富士山が望める。200坪はありそうな庭の芝生が、やわらかな午後の日差しを浴びて緑に輝いている。まだ2月の寒い日だが、時折吹き抜ける湘南の風は心なしか温かい。
庭の一角にある大きな鳥小屋の前で、野球帽をかぶった白髪の男性がハトにエサをやっている。その姿を、ベビーカーを押しながらやさしく見守る若い女性。なんとも穏やかな週末の家族の風景だ。孫やひ孫に見守られながら、こうしてのんびりと暮らす――。人の幸せというのは、こういうものなのかもしれない。しかしこの家族、4世代どころか、“新婚ホヤホヤ”なのである。
「おめでとうございます」本誌記者が男性にそう声をかけると、いぶかしげに記者のいる門まで歩み寄ってきた。「年をとってるし、そっと暮らしてるんだ。プライベートなことだから、そっとしておいてよ」といって眉をひそめた。
白髪の男性は日興コーディアルグループの元会長・金子昌資氏(72歳)。すでに一線を退いている金融界の大物が、最近になって財界の話題をさらっているのは、「年若い女性と“できちゃった結婚”した」とのウワサによる。
本誌は昨年7月8日号で映画監督の鈴木清順氏(88)の48歳差婚を、8月12日号で加藤茶(68)の45歳差婚をスクープした。まるで2人に感化されたかのように、堺正章(65)の22歳差、ラサール石井(56)の32歳差と、芸能界では「年の差婚」が大ブーム。そこへ今度は経済界で仰天ニュースである。本誌記者は金子氏に話を聞こうと湘南へと向かったのだった。
金子氏は1939年、岡山県生まれ。東京大学経済学部を卒業後、日興證券に入社し、主に国際部門を渡り歩いた。証券業界が総会屋への利益供与事件で激震した1997年に社長に就任した。現シティグループと提携し、米国流の厳しいリストラを断行。「アメリカかぶれの宇宙人」とも評されたが、2006年に粉飾決算問題の引責で会長を退くまで、日興のトップに君臨し続けた。2008年には高級ホテル予約サイト「一休」の会長に就任し、現在もその職にある。
さて、気になるのはその結婚相手だ。金子氏の知人が明かす。
「お相手は機械メーカーの元社長秘書で、年齢は30歳前後です。金子氏がメーカーの財務相談に乗っていた時期に知り合ったと聞いています」
本誌記者は豪邸の庭でベビーカーを押す彼女を見かけたが、北川景子似のスタイルのいい美人。自宅周辺を取材すると、金子氏が妻と子供を連れて歩く姿が何度も目撃されていた。近所に住む人の話。
「金子さんがベビーカーを押して、近所の商店に行くところをよく見かけます。昔からよく知っているけど、最初は私の顔を見るなり、金子さんのほうから“孫じゃないよ。オレの子供だからね”とニコニコして話しかけてきました。
豪邸に住んでいる金子さんはこの近辺では有名人。ベビーカーを押す金子さんと若い奥さんの姿を見て、“お孫さんにお子さんが生まれたらしい”というウワサが立ったんですけどね(笑い)」
金子氏が72歳、新妻が30歳前後とすれば、年齢差は40歳以上。たしかに親子よりも、祖父と孫に近い。そんな若い嫁を娶り、しかも子宝にまで恵まれるとは……娘や孫に囲まれて暮らす幸せもいいが、男として奮い立つ晩年である。
当初、記者の直撃に難色を示していた金子氏。しかし「おめでたいことなので」と再度水を向けると、「ありがとうございます。正式に籍を入れてちゃんと結婚していますから、反対もなにもありません。とても幸せですよ」といって笑みを浮かべた。
※週刊ポスト2012年3月2日号