「休眠口座」の存在が、にわかに注目を浴びている。政府が休眠預金を東日本大震災の被災地企業の支援策などに活用する検討に入ったと2月15日の朝日新聞が報じたが、その先鞭をつけたのが、日本財団の笹川陽平会長だ。笹川会長は2月上旬から産経新聞への寄稿やブログで「休眠預金という新たな“埋蔵金”を社会的に活用せよ」と訴えている。
休眠口座とは、最後にお金を出し入れした日から10年以上放置された口座のうち、預金者と連絡が取れないもののことを指す。休眠口座となればATMでの取り扱いが止められてしまう。通帳や登録している印鑑、身分証明書などを持って最寄りの支店を訪ねれば返還には応じてもらえるが、住所不明のケースがほとんどのため、残された預金は最終的に金融機関の収益として会計処理される。
学生時代などに家賃の振り込み用に口座を作り、就職で転居してそのままにしている口座などが多く、そのほとんどが1万円未満の小口口座だという。しかし、口座の存在を家族に知らせずに預金者が亡くなったケースもあり、数百万~数千万円が残ったままのこともある。口座数は億単位にのぼるとされる。
「休眠口座預金の多くは国民の浄財です。かつて税金で救済されたにもかかわらず、金融機関の収益となる現状はどう見ても納得がしがたい。東日本大震災では2万人近い死亡・行方不明者が出ましたが、震災直前まで使われていた生活口座が将来、休眠口座に移行したのでは犠牲者も浮かばれません」(笹川会長)
この“埋蔵金”はケタが大きい。笹川会長によれば、2002年まで認められていた仮名口座(本人確認がなかった時代に仮名で作られた口座)も含めると、「優に1000億円は超えると推察される」という。
※週刊ポスト2012年3月2日号