「洗練された形ではないけれど、蒸気や煙を吐きながら走る姿が忘れがたい。剥き出しの車輪が動く武骨な様も、今の時代に作られるものにはない魅力があります」(沿道で撮影していた50代の男性)
JR内房線の開業100周年を記念して2月10~12日まで千葉・房総半島を走行した蒸気機関車C61形20号機。その姿を一目見ようと、「撮り鉄」がズラリ。寒空の下、訪れたギャラリーは計5万7000人を数えた。
C61が製造されたのは1949年。東北地方で初の特急列車となった「はつかり」などを牽引したが、鉄道の電化・ディーゼル化が進み、1973年に廃車となった。蒸気機関車が国鉄から完全に姿を消したのは、それから3年後。C61も群馬・伊勢崎市の華蔵寺公園遊園地に保存・展示されていたのだが、「鉄道の産業遺産である蒸気機関車を後世に残すことを目的」として、JR東日本が一昨年から復元工事を開始。翌年には車籍復活を遂げ、今回の走行が実現した。
C61と同様、2009年にはJR九州が1975年に引退した蒸気機関車8620形の運行を開始するなど、現在、復活を遂げた蒸気機関車は計21台。武骨な昭和の人気者は、まだまだ底力を見せつけるのだ。
撮影■丹羽敏通
※週刊ポスト2012年3月2日号