民主党執行部は2月18日から300選挙区で順次、車座集会を開き、「消費税紙芝居」を使って増税キャラバンを始める。これは共同通信が小沢一郎・元民主党党首にインタビューし、「大改革もしないで増税するのは、国民を愚弄する背信行為だ」との小沢氏の発言を2月4日に報じた直後の党常任幹事会で突然方針が伝えられたものだ。
政府はすでに安住淳・財務相、岡田克也・副首相らの増税全国行脚をスタートさせており、今度は党主催で所属議員全員にそれを強制しようというのだ。増税反対派の若手議員が語る。
「いったん車座集会に出れば、増税に反対できなくなるから、これは反対派や中間派への踏み絵だ。党のカネで票を減らす増税キャンペーンなど気がおかしくなったとしか思えない」
そうした締め付けに、増税キャラバンの責任者にされた小沢グループの広野允士・党広報委員長(参院議員)は辞表をたたきつけた。広野氏が語る。
「車座集会で有権者の意見を聞くという建て前だが、実際は増税賛成派を集めて『大きな反対はなかった』とアピールする“やらせ”です。一般有権者は『民主党はウソをついた』と増税に反対しており、地元の会合でもそれを肌で感じる。政治理念として増税に反対だから、広報委員長として増税キャラバンに加担するわけにはいかない」
広野氏は辞表を出す前夜、小沢氏に進退を報告した。
「小沢さんからは、『おお、そうか。それは政治判断だから重く受け止める』といわれました」(広野氏)
辞任は小沢氏の承諾の上だった。
しかし、増税反対を叫ぶだけでは、増税礼賛の大メディアから「財源はどうする」「無責任」と集中砲火を浴びることは明白だ。
「そんなことは百も承知。増税が必要だという霞が関のウソを暴かなければ有権者への説得力はない。小沢さんは政策論争で増税派を論破する準備をしている」
小沢側近は自信満々の言い方をした。必要なのは、増税なしでこの国を立て直すビジョンと理念である。小沢氏は反増税の対案を示して、この国の「新しい形」を語れるのか。
※週刊ポスト2012年3月2日号