近年、村上春樹氏の名がノーベル文学賞の候補に挙げられるようになって久しいが、20世紀を代表する国際的作家・安部公房氏も晩年はノーベル文学賞の候補にも挙がっていた。
東大医学部に入学するも、医師国家試験を受けることなく卒業。作家デビュー後は日本だけでなく世界に影響を与え、40か国以上で翻訳出版されている文豪として知られる。
公房氏は日本で初めてワープロで執筆した作家でもあり、NEC『文豪』は文字通り文豪とNECが共同開発した機種だった。特許を取得し、商品化もされた簡易着脱型タイヤチェーン「チェニジー」を発明し、大阪万博の自動車館にも企画参加。
当時日本に3台しかなかったといわれるシンセサイザーで自ら作曲も手がけ、写真で見る仕事場にはトイレットペーパーの芯を素材にしたオブジェや、ピンク・フロイドのCDがあり、まさに“工房”さながらだった。
※週刊ポスト2012年3月2日号