1ドル=75円から80円の超円高圏でのもみ合いが続く為替相場。今後の相場はどう動いていくのか、「経済の千里眼」の異名をとる経済評論家の菅下清廣氏が解説する。
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昨年の10月31日、史上最高値の1ドル=75円32銭をつけたことを受けて、政府、日銀は為替介入を実施し、79円55銭まで戻しました。それから約3か月経ちますが、10月31日の安値と高値の間で揉み合って推移しています。おそらくこの間、政府はこれ以上の円高に振れさせないために「覆面介入」を続けたと推測できます。
経験上知られていることですが、同じトレンドが3か月続くと転換点を迎えることが多い。保ち合っていた相場はそろそろ一時的な円安に振れると読んでいます。為替介入と戦ってきた円買いの投機筋の体力が持ちこたえられなくなり、一時撤退すると予測できるからです。円安に振れた場合の目標値は、1ドル=80円近辺でしょう。もし80円を超えて振れることがあるとすれば、4~5月あたりに日銀がさらなる金融緩和策を打ち出した時です。
日経平均株価が1万円を超え、1ドル=80円より円安に振れた場合、どこまで進むのか。それは混迷を極める日本の政治次第です。
ターニングポイントは7~8月に解散総選挙があるかどうか。野田政権が消費増税法案を通して解散するなら、増税を打ち出して選挙に勝った政党はかつてありませんので、支持率も低い民主は敗北が確実です。
注目は橋下徹・大阪市長が率いる「大阪維新の会」の動向です。幕末に、薩摩や長州、土佐など地方の下級武士たちが中央に攻め上がって国家体制を変えたように、国家が混乱期を迎えた時には地方の新興勢力が国を変えるものです。
市場は大阪維新の会の動きを注視しています。どのアナリストもエコノミストも見逃していますが、昨年、日経平均株価が最安値をつけたのは11月25日。この2日後に大阪で知事選と市長選が同時に行なわれ、大阪維新の会が歴史的な勝利を収めた直前でした。ちょうどそのタイミングが日経平均の底入れとなったことは単なる偶然でしょうか? いや、これが株価の「サイクル」を示しているのです。
※週刊ポスト2012年3月2日号