元オウム真理教の平田信が警察に出頭した件で、改めて刑事と逃亡犯との関係がクローズアップされている。科学の目と人間の目から姿を消した〈逃亡者〉たちと、刑事の戦い。作家の山藤章一郎氏がリポートする。
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「毎朝、みんなが捜査で署を出て行く。そのあと私ら、2時間ほど机でひたすら手配の写真を見るわけです。
いま全国で1000人ほどが指名手配されとる。その内700~800人の顔を頭にたたきこむ。先日のオウムの平田信みたいに20年前の写真しかない者もおる。太った、髪型変えた、ひげ生やした、整形した。女から男に変えた。そんなんを写真で覚えて、見つけなあかん。
ポイントは目ェです。自宅のトイレでも繰り返し、その写真の男の目ェを覚える。じっと見たら、一重、二重、白目と黒目の比率、上がり目、下がり目、目尻の角度、みな違う。
34年前に、大阪府警が始めた捜査法です。現在で3567人の指名手配被疑者を検挙しました。年間100人以上。究極のアナログ捜査をする誇りの課です。人員、組織は外に発表できんが、〈見当たり〉いう捜査です」
インタビューに答える大阪府警刑事部捜査共助課次長・丸尾圭司警視と同課の刑事らは、そうして毎日20km、大阪市内を歩きつくす。顔写真で覚えた被疑者を雑踏の中から見つけだす。
「もしもしご主人、どちらに行かれますか」
「なんで分かりましたんや。名前も変えた、変装して潜伏しとった。もう5年逃げとるのに」
通常3人組で追尾しながら首のほくろや特徴を記憶の中から取りだし、確認して逮捕する。これまで、誤認逮捕はない。
「1000人逮捕してもたったひとりを間違えたら、この捜査方法は終わりです。緊張感とひたすら指名手配者の目ん玉を記憶する気力、体力、眼力の勝負です」
※週刊ポスト2012年3月2日号