アメリカ企業の多くが業績を伸ばしている。アップルなどの一部の例外を除けば、好調な企業にはある共通点があると、大前研一氏は指摘する。それらの企業は、いかなる戦略を立てているのか。以下は、大前氏の解説である。
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日米の株価が大きく乖離している。昨年1年間で日経平均は17.3%下落し、NYダウは5.5%上昇した。アメリカ企業の多くが業績を伸ばし、日本企業が総じて低迷したからである。
では、好調なアメリカ企業とは、どういう会社なのか? それは、アップルなど一部の例外を除き「当たり前の商品を非凡なまでに世界中で売りまくっている平凡な会社」である。
たとえば、スターバックスは史上最高益を記録し、同社のハワード・シュルツ会長兼CEOが米誌『フォーチュン』の「経営者オブ・ザ・イヤー」に選ばれた。マクドナルドは、この10年間で全世界の売上高が2倍、収益が4倍になり、いずれも史上最高を更新している。
コカ・コーラも史上最高益を記録した。いまコーラ業界はアフリカのサブサハラ(サハラ砂漠以南の地域)が主戦場になっているが、同社のムフタル・ケント会長兼CEOは「アフリカのすべての村を赤くする(アフリカのすべての村に赤いロゴマークのコカ・コーラを売る)」、「道路がなければ背負ってでも届ける」と述べている。
これらの会社の商品は「ハウスホールドブランド」と呼ばれる。つまり、特別な輸入ブランドや高級ブランドではなく「普通の家庭で普通に受け入れられているブランド」である。
それを世界中、とくに成長している新興国で徹底的に浸透させてアメリカ国内と同様に普遍化(ハウスホールド化)する、という戦略で業績を伸ばしているのだ。
※週刊ポスト2012年3月2日号