国際情報

金正日葬儀登場の謎の女性 金正恩夫人でなければ個人秘書か

 金正日の死により急造された金正恩新体制。ジャーナリスト・惠谷治氏が刻々と変化する北朝鮮の内情を様々な映像資料から分析する。ここでは昨年12月28日の金正日の国葬に登場した「謎の女」について解説する。

  * * *
 金正日の国葬が行なわれた昨年12月28日、出棺の直前、金正恩は錦繍山(クムスサン)記念宮殿に安置された金正日の遺体に対して、6回目の参拝を行なった。

 その様子は朝鮮中央テレビの夜11時からのニュースで報じられ、映像の片隅に「謎の女」が映っていたことを、私は前々号の本誌SAPIOで速報的に紹介した。今回は、ニュースに映し出された“異常な4秒間”をレポートする。

 映像では、金正恩の右手に軍人たちが整列している。左から金正覚大将(党政治局員候補、党中央軍事委員、国防委員、軍総政治局第1副局長)、呉克烈大将(国防委副委員長)、李勇武次帥(党政治局員、国防委副委員長)という、軍の最高幹部たちが待機している。金正覚と呉克烈の間が空いているのは張成沢大将(党政治局員候補、国防委員会副委員長)の立ち位置だからだ。

 なんと、「謎の女」は、この列に加わるために歩いてくる最高幹部たちの前を平然と横切り、彼らの通り道を塞ぎ、金正恩の後ろ姿をいとおしそうに見送っているのだ。長幼の序が厳しい儒教的共産主義国家においてはまずあり得ない光景である。

 北朝鮮の儀式において、夫人が公の席に登場することは、わずかの例外を除いてあり得ない。この若い「謎の女」が金正恩夫人でないとすると、金正恩の記述秘書(個人秘書)としか考えられない。北朝鮮において独裁者のスケジュール管理を担う個人秘書は絶大な権力を握るポジションだ。

 実は、昨年の夏、中国のインターネットサイトで、「26歳の金玉鳳」という女性が金正恩の個人秘書である、というニュースが女性の写真とともに紹介されたことがある。2008年に平壌医科大学を卒業した金玉鳳は、卒業前に突然行方不明になったが、金正日の別荘にいることが判明した、という内容であった。

 しかし、ネットに掲載された写真の女性は、韓国のレースクイーンの朱多荷であることが判明。身長173cmの朱多荷は、韓国タイヤに所属し、モーターショーなどで活躍していて、多くのファンがいる。この騒動について、韓国紙は報じたが、日本のメディアはどこも触れなかった。

 ただし、これは金玉鳳であるとされた写真が、韓国のレースクイーン・朱多荷であった、という事実を示しているに過ぎない。つまり、金正恩の個人秘書が「新義州出身で、平壌医科大卒の26歳の金玉鳳」である可能性は残る。

 私は1997年に出した『北朝鮮解体新書』(小社刊)のなかで、金正日が写った写真から“消えた美女”を紹介したことがあるが、彼女が金正日の個人秘書兼愛人の金玉であることが明らかになったのは、7年後のことだった。今回の「謎の女」についても、いずれ判明するだろうが、事実が明らかになるまでは、私は彼女を「金玉鳳」と呼ぶことにしたい。

※SAPIO2012年3月14日号

関連記事

トピックス

自宅で亡くなっているのが見つかった中山美穂さん
《中山美穂さん死後4カ月》辻仁成が元妻の誕生日に投稿していた「38文字」の想い…最後の“ワイルド恋人”が今も背負う「彼女の名前」
NEWSポストセブン
工藤遥加(左)の初優勝を支えた父・公康氏(時事通信フォト)
女子ゴルフ・工藤遥加、15年目の初優勝を支えた父子鷹 「勝ち方を教えてほしい」と父・工藤公康に頭を下げて、指導を受けたことも
週刊ポスト
山口組分裂抗争が終結に向けて大きく動いた。写真は「山口組新報」最新号に掲載された司忍組長
「うっすら笑みを浮かべる司忍組長」山口組分裂抗争“終結宣言”の前に…六代目山口組が機関紙「創立110周年」をお祝いで大幅リニューアル「歴代組長をカラー写真に」「金ピカ装丁」の“狙い”
NEWSポストセブン
「衆参W(ダブル)選挙」後の政局を予測(石破茂・首相/時事通信フォト)
【政界再編シミュレーション】今夏衆参ダブル選挙なら「自公参院過半数割れ、衆院は190~200議席」 石破首相は退陣で、自民は「連立相手を選ぶための総裁選」へ
週刊ポスト
中居正広氏と報告書に記載のあったホテルの「間取り」
中居正広氏と「タレントU」が女性アナらと4人で過ごした“38万円スイートルーム”は「男女2人きりになりやすいチョイス」
NEWSポストセブン
Tarou「中学校行かない宣言」に関する親の思いとは(本人Xより)
《小学生ゲーム実況YouTuberの「中学校通わない宣言」》両親が明かす“子育ての方針”「配信やゲームで得られる失敗経験が重要」稼いだお金は「個人会社で運営」
NEWSポストセブン
『月曜から夜ふかし』不適切編集の余波も(マツコ・デラックス/時事通信フォト)
『月曜から夜ふかし』不適切編集の余波、バカリズム脚本ドラマ『ホットスポット』配信&DVDへの影響はあるのか 日本テレビは「様々なご意見を頂戴しています」と回答
週刊ポスト
大谷翔平が新型バットを握る日はあるのか(Getty Images)
「MLBを破壊する」新型“魚雷バット”で最も恩恵を受けるのは中距離バッター 大谷翔平は“超長尺バット”で独自路線を貫くかどうかの分かれ道
週刊ポスト
約6年ぶりに開催された宮中晩餐会に参加された愛子さま(時事通信)
《ティアラ着用せず》愛子さま、初めての宮中晩餐会を海外一部メディアが「物足りない初舞台」と指摘した理由
NEWSポストセブン
「フォートナイト」世界大会出場を目指すYouTuber・Tarou(本人Xより)
小学生ゲーム実況YouTuberの「中学校通わない宣言」に批判の声も…筑駒→東大出身の父親が考える「息子の将来設計」
NEWSポストセブン
大谷翔平(時事通信)と妊娠中の真美子さん(大谷のInstagramより)
《妊娠中の真美子さんがスイートルーム室内で観戦》大谷翔平、特別な日に「奇跡のサヨナラHR」で感情爆発 妻のために用意していた「特別契約」の内容
NEWSポストセブン
沖縄・旭琉會の挨拶を受けた司忍組長
《雨に濡れた司忍組長》極秘外交に臨む六代目山口組 沖縄・旭琉會との会談で見せていた笑顔 分裂抗争は“風雲急を告げる”事態に
NEWSポストセブン