日本全国で「震災がれき受け入れNO」の動きが広がっている。岩手、宮城、福島を除く44都道府県のうち、震災がれきの受け入れを決めている市区町村があるのは、青森県、山形県、東京都、静岡県の4都県にすぎない(2月17日現在。東京都の場合は23区で構成する『事務組合』が受け入れ母体)。11道府県では「受け入れ検討中」の市町村があるものの、そのほかの29府県は管轄の市町村で「受け入れ検討せず」「把握せず」という回答だった。
なぜ、震災がれきが“火中の栗”となっているのか。背景には、放射能汚染への根強い不安がある。
象徴的なのは、佐賀県武雄市の例だ。同市が昨年11月に震災がれきの受け入れを表明すると、翌日から市役所には市民からの苦情や抗議の電話が殺到した。「苦しみをお前たち職員に与えてやる」などといった脅迫的な内容もあり、同市はわずか3日後に受け入れを断念することになった。
すでに受け入れを決めている市町村も、住民の反応は複雑だ。東京都は石原慎太郎都知事(79才)の鶴の一声で、3月から女川町のがれき受け入れを決定。焼却を行う「東京23区清掃一部事務組合」が都内各地でがれき受け入れの住民説明会を開いているが、その会場には住民の不安と不信が充満している。品川区の会に参加した主婦(69才)はこう訴える。
「私がいま住んでいる団地には、ホットスポットがあったんです。線量計を借りて測ったら、周囲より5倍以上高い場所になっていて、除染してもらいました。被災地のことを思うとがれきの受け入れに反対しづらい。でも、これ以上放射能汚染が増えるのも嫌なんです」
大阪市では、橋下徹市長(42才)ががれきの受け入れを検討中。同市在住の母親たちでつくる「放射能から子どもを守るママの会・大阪市」が懸念するのは、子供の健康への影響だ。
「原発事故の経緯を見ても、国は『安全』『安心』というばかりで、都合の悪い情報は隠す傾向がある。いま、毎日の食べ物でさえ気をつけているのに、ましてやそこへ汚染がれきが燃やされて、放射性物質が振りまかれたらどうすることもできない。将来的に子供の体をむしばんだらどう責任をとるんですか」(同会代表の小林和代さん)
※女性セブン2012年3月8日号