犯罪予防の観点から、街中の監視カメラがどんどん増えている。だが、それでも犯罪は起き、逃亡犯は逃げ続ける…。最新の監視カメラ事情を知るため、作家の山藤章一郎氏はJR品川駅に降り立った。
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駅の監視カメラでとらえた画像は、警察にどう届き、どう解析されるのか。たとえば、品川駅の1日の乗降客はほぼ30万人。30万分の1をどう識別するのか。
「カメラの設置台数を含め、一切、お答えできません」
〈JR東日本〉広報の答えを受け、〈日本防犯学校〉梅本正行学長に品川駅探索を同道ねがった。オウム逃亡犯・平田信が大阪から着いたのと同刻・夜8時30分に、品川駅21番22番の新幹線ホームに立つ。
1号車から16号車の停車位置まで歩く。列車の運行、乗客の安全確認、不審者移動チェック、それらのカメラが、ホームの端に4台あった。このカメラに、犯罪抑止の効果があるのか。梅本氏。
「そんなもな、ない。コンビニにあんなにカメラがついてるのに、万引き、強盗は絶えない。置き引き、酔っ払いの介抱強盗、喧嘩などのホームの犯罪も減ってない。ここのカメラは抑止のためではなくて、異常を察知するためのものだ。あっ、あそこにもある。ホームの内側に向いてるだろ。ありゃ完全に犯罪監視用だ」
ここまでで、見逃しはあるだろうが28台確認できた。ホームから、改札階へのエスカレーターに乗る。昇っていく真正面からも、両脇からもレンズが正確に顔を狙っている。すべての人間が、ここで記録されている。
昇ると、在来線への乗り継ぎ改札になる。15台の改札スルーがある。天井にずらりとカメラが据えつけてある。かぞえてみた。改札機と同じ数があった。15台。梅本氏。
「俺も驚いた。こんなに監視カメラがあるんだ。何時ごろ、品川駅の改札を通りましたという平田の証言で、画像を捜したんだろうけど、あのカメラは、だいたい1秒に4~5枚撮る。10秒で40枚、1時間でその360倍。これを目で捜す。死に物狂いだな」
※週刊ポスト2012年3月2日号