眠れない、わけもなく涙があふれてしまう、人づきあいが面倒くさい――45~55才の女性の63.5%もが、そんな更年期のメンタル症状に悩まされている。しかし、そのうちの約9割がなんの治療もせずに、つらさを「我慢している」ことが明らかになった。あまりに我慢しすぎると心身へ負担がかかり、症状をより深刻にしてしまう場合も。現在、さまざまな治療法が次々に登場している。
HRT(ホルモン補充療法)とは、その名の通り、少なくなった女性ホルモンを薬で直接補う治療法だ。
「ひと昔前まではホルモン治療に対する理解が進んでおらず、産婦人科医でも“危ない若返り医療”と認識している人が多かった。一時期、乳がんになりやすいと報じられたため、一般女性のなかにはいまだに“危ない”というイメージをもつ人もいるようです。しかし、5年以内の治療であれば乳がんのリスクも問題がないことがわかっていますので、安心してください」
と話すのは池下レディークリニック銀座・池下育子院長。
更年期の根本的な原因である女性ホルモンの不足を解消するため、気分の落ち込みや抑うつ感、不眠といったメンタル症状が改善されるうえ、ホットフラッシュや肩こり、腰痛などの身体的症状にも効果は大きいという。
さらに、成城松村クリニックの松村圭子院長によれば、こんな効果まで。
「女性ホルモンは“女性らしさ”をつくりだすホルモンなので、それを補充することで美肌やつやのある髪を保つ効果があるうえ、骨粗鬆症のリスクの低減や認知症を予防する効果も期待できるんです」
更年期症状がある場合には保険が適用されるので、自己負担は月1500円程度。ただし、美容目的などの場合は保険適用外だ。
HRTを行う場合、まず更年期に詳しい婦人科や更年期外来を受診しよう。例えば、間壁さよ子さんが院長を務める神田第二クリニックでは、次のような流れになるという。
「まず、問診票と更年期の状況を診断する自己チェック表に記入していただいたうえで、問診を行います。それから内診検査をし、血液検査でエストロゲン、プロゲステロン、卵胞刺激ホルモンや黄体形成ホルモン、エストラジオールといったホルモンの数値のほか、中性脂肪や糖の数値も調べます」(間壁さん)
HRTは、すでにがんにかかっている人や、高血圧、肥満、糖尿病の人の場合は注意を要するからだ。
そして検査の結果を見て、医師と相談しながら症状に合った治療法を決めていく。
「ホルモンの数値を見ながら、HRTをどのように行うか、あるいは低用量ピルなど他の方法をとるかを判断していきます。対症療法として、精神的な不調の要素が強いかたには抗うつ薬や睡眠導入剤、漢方薬など、症状に応じた薬を出すこともあります」(間壁さん)
HRTにものみ薬、塗り薬、貼り薬(パッチ)の3種類があり、少量タイプも登場しているので、より細かな調節が可能になってきている。
※女性セブン2012年3月8日号