財務省のいうがままに増税に邁進してきた野田佳彦・首相が泥沼にはまっている。「消費税法案を3月末までに国会に提出する」と大見得を切ったものの、法案提出には小沢一郎氏ら党内の増税反対派の激しい抵抗が予想されるうえ、強引に提出しても、自民党や公明党との協議がまとまらない限り成立は不可能だ。
しかも、自公は増税協議のテーブルに着くことさえ拒否し、国会では与野党対立で来年度予算案の審議が大幅に遅れて14年ぶりの暫定予算の編成が必要な情勢になっている。予算成立が遅れれば震災復興にも国民生活にも支障が出る。支持率は急降下だ。
野田首相や岡田克也・副総理が冷静なら、支持率20%台の政権がねじれ国会で大増税法案を成立させることなど、針の穴に象を通すより難しいとわかるはずだ。
それでも、財務省は野田首相に社会保障・税一体改革素案を閣議決定させ、「与野党協議に期待しているが、年度内に法律を出す」(藤村修・官房長官)と成立の見通しもない見切り発車で法案提出を決めさせた。小沢氏との対決に勝利するためには総理大臣すら私兵に使う傲岸不遜が見える。
財務相経験者である谷垣禎一・自民党総裁は、「首相が小沢氏と一対一で話し、『(消費税増税に)反対なら出て行ってください』と整理しないと、政治の力は生まれない」と、与野党協議の条件に「小沢排除」を突きつけた。誰の“耳打ち”があったのだろうか。
野田首相は、自公が解散・総選挙を条件に消費税法案に賛成する「話し合い解散」に一縷の望みをつないでいる。財務省は首相に「小沢を検察か国税が排除すれば、自公との話し合いの状況ができる」――そう囁いて操っている。
※週刊ポスト2012年3月9日号