路線の多くが津波被害を受けながら、東日本大震災発生から5日後には復興支援のために久慈~陸中野田間の運行を無料で再開した、岩手県の三陸鉄道。運転士候補として北リアス線の運行部に勤務する小松翔さん(19)の顔にはいまだあどけなさが残る。彼は昨春、三陸鉄道が迎え入れた12年ぶりの、たった1人の新入社員だ。
「震災前の高校在学中に内定をもらいましたが、地震の後はライフラインもなく、三鉄(三陸鉄道)と連絡もほとんど取れない状態でした。内定が取り消しになるのではと心配でしたよ。僕自身は地元のために働きたかったので、入社をやめようと思ったことは一度もありません」(小松さん)
震災の3週間後に入社してからは、瓦礫の撤去や車両の整備に追われる日々。一段落ついて、駅での業務ができるようになったのは、つい最近のことだという。
「まだ始めたばかりで、お客さんと話す機会は少ないんですが、若い自分が仕事をしているとみんなが声をかけてくれるんです。『若いねぇ。お兄ちゃん、どうしたの』って。『今年から入りました』と挨拶すると、『あら~、そら頑張ってね』と応援されます。ありがたいですし、励みになっています」(小松さん)
※週刊ポスト2012年3月9日号