東日本大震災以降、多くの企業が被災地支援を行ったが、人々の心を癒す「本」をキーワードにして被災地を支援する企業もある。
2月10日、宮城県東松島市の鳴瀬地区保育所にアナウンサーやキャスター11人が訪れた。紙芝居・絵本の読み聞かせなど、1時間にわたって園児たちと触れ合う「よみひと知らず」――日本テレビが立ち上げた復興支援活動のひとつである。活動に参加した社員のひとりがこう話す。
「園児の多くが仮設住宅に住んでいて、なかには母親を亡くした子もいると聞きました。そんな子供たちが私の読む紙芝居や絵本を熱心に聞いてくれる。そのあとで全員一緒に体操をしたりして……嬉しそうな笑顔を見ていると、こちらの方が癒されます」
被災者への衣食住の手当ては最優先されなければならない。しかし、時間が経過した今なすべきことは、被災者の心のケアである。三井物産は陸前高田市に木造仮設図書館を建て、出版団体に寄贈している。
「当社は日本の企業のなかで社有林の保有面積が3番目に多く、その木材を使って復興支援ができないかと考えました。広さが100平方メートルほどあるので子供たちには遊び場兼図書館として使ってもらっています」(三井物産広報部)
ほかにも日産自動車は移動式図書館のベース車両を提供、夏には2台目の寄贈も決定したという。
心に訴える支援活動は被災者に笑顔をもたらす。しかし、真の復興を実現するためには、被災地の産業を復活させ、経済を立て直す以外に道はない。
※週刊ポスト2012年3月9日号