サラリーマンとていつどこで恨みを買っているかわからないままにトラブルに巻き込まれ、社会的信用の失墜を招くケースが後を絶たない。パワハラ、セクハラなどで「ハメられる」ケースもある。
個人的に相手をハメるだけでなく、専門業者に依頼するケースも増えている。
「以前は素行調査や浮気調査が主な仕事だったが、今はそれよりも“復讐したい”という依頼が多い。食べていくために、かなり危ない手段を取る会社も増えてきていますよ。うちでも月30件ほどの相談の半数以上は“恨みを晴らしたい”というもの。女性も多いですが、サラリーマンからの依頼もかなりあります」
こう話すのは、「復讐屋」も兼務する、ある調査会社の社長である。
「ハメる手段のひとつが痴漢。方法は簡単で、相手の男性が乗る電車を調べて、そこに手配した女性を送り込む。女性はわざと体を近づけて騒ぎ立てる。相手が酔っていたら、まず九分九厘成功します。最近では、警察は被害女性の身元も洗うので、こちらにもリスクがある。女性を特別手配する場合は特別料金をいただいています」(調査会社社長)
やられた側にとっては完全な“冤罪”だが、痴漢のレッテルを貼られた痛手は極めて大きい。痴漢冤罪に詳しい渡部直樹弁護士がいう。
「痴漢容疑をでっち上げられて逮捕されたら、それが冤罪だったとしても、社会的信用を回復するのは並大抵のことではない。20日間も留置場にいなければならないと思うから、身に覚えがなくても『じゃあ、やりました』と認めて帰してもらおうとする。虚偽の自白が起こりやすい構造があるんです」
裁判で争うにしても、費やす時間と労力は並大抵なものではない。それで有罪になれば会社はクビ。有罪にならなくても会社にいられなくなることも多いという。リスク・ヘッジ代表取締役の田中辰巳氏の話。
「会社によっては、社名が出ると大きなイメージダウンになるので、できれば“元社員”にしたい。だから早く処分を下そうとする。対処は会社によってまちまちです。現行犯逮捕の場合は解雇、後から疑いを持たれて逮捕された場合は、起訴された段階で解雇するケースが多い」
※週刊ポスト2012年3月9日号