韓国のハンナラ党が、党名を変えた。支持率回復を目指す与党の苦肉の策だが、苦心の新党名もネットなどでは結構からかわれている。韓国のネチズン(ネット市民)たちは、どう反応したか? その評判について、産経新聞ソウル支局長の黒田勝弘氏が解説する。
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選挙の季節が始まった韓国で与党ハンナラ党が党名を変えた。「セヌリ党」という。「セヌリ」は「新しい(セ)世の中(ヌリ)」という意味だから「新しい社会、新しい時代を開く党」というわけだ。
韓国では近年、ハングル主義から漢字では書けない韓国固有の単語による名前が流行っている。「ハンナラ」も「大きい(ハン)国(ナラ)」で漢字無しのハングル名だ。
漢字を知らない若者はともかく、年配者に支持の多い保守政党さえこれだ。漢字排除という文化ナショナリズムはここまできている。
政権末期で与党の支持率低下はひどい。野党の民主統合党を下回っている。4月の国会議員選挙での敗北は確実で、このままだと12月の大統領選も危ない。
党名変更は支持率回復を目指す与党の苦肉の策だが、苦心の新党名もネットなどでは結構からかわれている。
「あれじゃ幼稚園だ」という。幼稚園の名前には「セオリニ(新しい子ども)幼稚園」など「セ」がついたところが多いからだ。
さらに厳しいのは、「セ」には「鳥」の意味もあることから「これじゃ“鳥の世の中”“鳥集団”じゃないか」という。韓国では鳥は「チョドゥ(鳥頭)」といってバカの象徴になっている。ちなみに英語でも頭の悪いことを「バード・ブレイン」という。
ネット世界は若い世代や左派、野党系が幅を利かしているので冷やかされても仕方ないが、お堅い漢字の新党名で堂々と勝負できないあたり、次期政権に向けた保守陣営の悩みの深さがある。
※SAPIO2012年3月14日号