福島第一原発事故から1年が経とうとしているが、今も放射性物質の除染が行なわれている。だが、大前研一氏は、現在行われている除染に対し、疑問を抱いているようだ。以下、大前氏の解説だ。
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復興予算が肥大化すると復興利権も肥大化する。一例は放射性物質の「除染」である。福島県では小中学校や幼稚園・保育園の校庭、園庭の表土を重機で削ったり、建物の屋根や外壁、道路などを高圧放水で洗浄したりする除染業者がはびこりだしているが、これは今後ますます増えるだろう。
なぜなら、除染作業が「雇用」になるからだ。新潟県や長野県などの豪雪地帯では、除雪作業が冬季に仕事がない人たちの“失業対策事業”と化し、大雪が降れば降るほど好ましいという矛盾した状況になっている。福島県の除染作業も、おそらくそれと同じようになると思う。
だが、除染作業は福島第一原発事故が起きて最初の1か月でやるべきだった。1年経ってからやっても、ほとんど意味はないのである。福島第一原発周辺以外の地域では、今までに降った雨や雪で大半の放射性物質は自然に流れているからだ。
ただ、過去の例から見ると、流れて行った先で予想もしない場所に溜まる「ホットスポット」が必ず出てくるので、そこだけ見つけて除染すればよいのである。これなら、除染しなければならない地域は極めて限られるはずだ。このまま除染業者の団体ができて利権化してしまうと、1ミリシーべルトまでやろうとか校庭は20cmまで土壌を交換しようなどと際限なく仕事を広げていくだろう。
※SAPIO2012年3月14日号