ライフ

B級ご当地グルメでブームの「唐揚げ」 起源は奈良時代に遡る

ブームの「唐揚げ」 その起源は?

 ちょっとしたブームになっている「から揚げ」。誰でも食べたことのある庶民的な料理だが、意外にその由来は知られていない。食事情に詳しいライター・編集者の松浦達也氏がニュースや著名人などに縁のある料理を紹介する「日本全国縁食の旅」。「から揚げ」の「謎」に迫ります。

 * * *
「から揚げ」がアガっている。「聖地」と言われる大分県・宇佐や中津のから揚げ専門店や、北海道の「ザンギ」を供する店舗など地方色豊かな、から揚げ店がこの数年都内に続々と進出している。

 3月4日の『B級ご当地グルメパラダイス in NOBEOKA』でも出展13団体中、宇佐から揚げ、延岡チキン南蛮、別府とり天と3団体が鶏を揚げている。その人気は女性ファッション誌でも、から揚げ特集が組まれるほどだ。ところがこのから揚げ、いまひとつ起源がはっきりしない。

 諸説あるが、大元は奈良時代にさかのぼる。遣唐使を通じて、唐から食べ物を油で揚げる技法が伝わった。そしてその技法が江戸後期~明治時代にかけて、鶏肉を食べる文化とともに広まったという。一般に「唐揚げ」と書かれるのはこのためという説だ。

 一方、日本唐揚協会のHPでは「江戸時代初期に中国から伝来した普茶料理では『唐揚げ』」と呼ばれていた」という説も紹介されている。1973年に定められた、当用漢字音訓表で「空」を「から」と読むことができるようになり、「空揚げ」との表記も一般的に使われるようになった。

 味わいで現代のから揚げの原型とも言われるのが、愛媛県今治市に伝わる郷土料理「せんざんき」だ。『やきとり天国』(土井中照)によれば、その語源は中華料理で鶏のから揚げを指す「軟炸鶏(エンザーチ)」や「清炸鶏(チンザーチ/センザーチ)」にあるという。

 昭和初期、満州から引き揚げた飲食店の店主が現地で教わった料理を供するようになったことから始まったというのだ。千数百kmも離れた北海道発祥のザンギと似た響きなのは、語源が同じ「炸鶏(ザーチー)」から来ているという説が有力だ。

 衣をつけた鶏の揚げ物と言えば「竜田揚げ」もある。この料理は百人一首にも選ばれている「ちはやふる神代もきかず龍田川からくれなゐに水くくるとは」という在原業平の歌からとったもので、「龍田川に流れる紅葉の様を思って、龍田揚げとした」(『たべもの語源辞典』/編・清水桂一)と、こんがりと揚がった姿を指しているという。

 ちなみに同書にも「から揚げ」という項目は見当たらない。その由来にさまざまな説があるのは、裏返して言えば「から揚げ」が長く生活のなかで親しまれてきたということの証でもある。

 3月3日はひな祭りの「桃の節句」だけでなく、「闘鶏の節句」でもある。「唐の玄宗皇帝が幼時に遊戯的に闘鶏させたところ、はしなくも王位をついだ伝説による」(『戦国時代の宮廷生活』/奥野高広)とあるように、強い鶏を献上すれば官職に就けたほど、当時の皇帝も鶏好きだったということのよう。そもそも節句というのは神にごちそうを供え、神と人が共食する行事でもある。

 揚げたてを噛むと肉の線維の間から、じゅわぁっと肉汁がしみ出すジューシーさ。誰かと共に食べてもいいし、一人でかぶりつくのもいい。もちろんビールも必要だ!

関連キーワード

関連記事

トピックス

小室圭さんの“イクメン化”を後押しする職場環境とは…?
《眞子さんのゆったりすぎるコートにマタニティ説浮上》小室圭さんの“イクメン”化待ったなし 勤務先の育休制度は「アメリカでは破格の待遇」
NEWSポストセブン
遺体には電気ショックによる骨折、擦り傷などもみられた(Instagramより現在は削除済み)
《ロシア勾留中に死亡》「脳や眼球が摘出されていた」「電気ショックの火傷も…」行方不明のウクライナ女性記者(27)、返還された遺体に“激しい拷問の痕”
NEWSポストセブン
当時のスイカ頭とテンテン(c)「幽幻道士&来来!キョンシーズ コンプリートBDーBOX」発売:アット エンタテインメント
《“テンテン”のイメージが強すぎて…》キョンシー映画『幽幻道士』で一世風靡した天才子役の苦悩、女優復帰に立ちはだかった“かつての自分”と決別した理由「テンテン改名に未練はありません」
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)と稲川会の内堀和也会長
《ヤクザの“ドン”の葬儀》六代目山口組・司忍組長や「分裂抗争キーマン」ら大物ヤクザが稲川会・清田総裁の弔問に…「暴対法下の組葬のリアル」
NEWSポストセブン
1970~1990年代にかけてワイドショーで活躍した東海林さんは、御年90歳
《主人じゃなかったら“リポーターの東海林のり子”はいなかった》7年前に看取った夫「定年後に患ったアルコール依存症の闘病生活」子どものお弁当作りや家事を支えてくれて
NEWSポストセブン
テンテン(c)「幽幻道士&来来!キョンシーズ コンプリートBDーBOX」発売:アット エンタテインメント
《キョンシーブーム『幽幻道士』美少女子役テンテンの現在》7歳で挑んだ「チビクロとのキスシーン」の本音、キョンシーの“棺”が寝床だった過酷撮影
NEWSポストセブン
女優の趣里とBE:FIRSTのメンバーRYOKIが結婚することがわかった
女優・趣里の結婚相手は“結婚詐欺疑惑”BE:FIRST三山凌輝、父の水谷豊が娘に求める「恋愛のかたち」
NEWSポストセブン
タレントで医師の西川史子。SNSは1年3ヶ月間更新されていない(写真は2009年)
《脳出血で活動休止中・西川史子の現在》昨年末に「1億円マンション売却」、勤務先クリニックは休職、SNS投稿はストップ…復帰を目指して万全の体制でリハビリ
NEWSポストセブン
中川翔子インスタグラム@shoko55mmtsより。4月に行われた「フレンズ・オブ・ディズニー・コンサート2025」には10周年を皆勤賞で参加し、ラプンツェルの『自由への扉』など歌った。
【速報・中川翔子が独立&妊娠発表】 “レベル40”のバースデーライブ直前で発表となった理由
NEWSポストセブン
“凡ちゃん”こと大木凡人(ぼんど)さんにインタビュー
「仕事から帰ると家が空っぽに…」大木凡人さんが明かした13歳年下妻との“熟年離婚、部屋に残されていた1通の“手紙”
NEWSポストセブン
太田基裕に恋人が発覚(左:SNSより)
人気2.5次元俳優・太田基裕(38)が元国民的アイドルと“真剣同棲愛”「2人は絶妙な距離を空けて歩いていました」《プロアイドルならではの隠密デート》
NEWSポストセブン
『ザ・ノンフィクション』に出演し話題となった古着店オーナー・あいりさん
《“美女すぎる”でバズった下北沢の女子大生社長(20)》「お金、好きです」上京1年目で両親から借金して起業『ザ・ノンフィクション』に出演して「印象悪いよ」と言われたワケ
NEWSポストセブン