いま中国で最もセンセーショナルに報じられている話題のひとつが四川省重慶市の王立軍副市長についてだろう。王副市長は重慶市のトップ、薄熙来・共産党委員会書記の腹心であり、公安トップとして権勢を振るっていた。ところが、今年2月6日、政治的保護と米国亡命を求めて総領事館に駆け込んだものの、総領事館から亡命を拒否された。王副市長は館外に出たところを当局に身柄を拘束され、いまは汚職の容疑で、北京で取り調べを受けている。
一説によると、王副市長は薄熙来書記の汚職の事実もつかんでおり、これが公になれば、秋の共産党大会で政治局常務委員会入りし党の最高幹部となることが確実とされていた薄書記の逮捕もあり得るといわれるなど、王副市長の口から何が語られているのか、中国国内のみならず、世界中のチャイナウォッチャーが注目しているのだ。
そのような折も折、北京では、3月3日から中国人民政治協商会議(政協)、5日からは全国人民代表大会(全人代)が始まる。これは「両会」といわれ、年に1回の重要会議とされ、中国全土から3000人の全人代委員らが一堂に会するため、北京ではこの時期、どこのホテルも満杯になるのだが、北京では最も宿泊が難しい人民大会堂賓館(ホテル)に重慶市代表団が泊まることになったというのだ。
このホテルは名前の通り、人民大会堂に隣接しており、宿泊客はVIP待遇となる。さらに、警備に当たる武装警察部隊の本部もすぐ近くで、「時期も時期だけに、重慶市代表団は24時間監視されている」ともっぱらの評判だ。
しかも、渦中の王副市長は全人代の重慶市選出の委員でもあり、全人代への出席も書類上は可能だ。それだけに、ひょんなことから、王副市長が姿を現す可能性もゼロではない。「王副市長が現れたときに備えて、重慶市の代表団は特別待遇なのではないか」と北京市民の間でも噂になっている。