何人もの男を手玉にとり、“婚活詐欺”と殺人の罪に問われている木嶋佳苗被告(37才)の裁判に、とりわけ30~40代女性たちが注目している。なかには事件の発端から法廷劇までを余すところなく追跡している“追っかけ女性”まで出現。
2月24日金曜日、午前9時前。平日の朝であるにもかかわらず、木嶋裁判が行われているさいたま地裁前には、この日も傍聴券を求める人たちの長い行列ができていた。その数、およそ250人。傍聴できるのは49人と決まっているため、倍率はおよそ5倍だ。
一体なぜここまで木嶋被告に注目が集まるのだろうか。
「“自分は綺麗じゃないからモテなくてもしょうがない”と思ってきた自分なりの常識を、木嶋被告に打ち砕かれた気がする」(35才・会社員)
と話す人もいる。精神科医の香山リカさんがいう。
「女性たちの中で“こう生きるべき”みたいな、通り一遍の決められた理想像がメディアで報じられているもとで、そこに対して嘲笑うかのように、“そうじゃなくてもできるんだよ”と木嶋被告がやってみせた。
そんなところを一部の女性たちは痛快に感じた。特に、自己主張が苦手で日ごろは自分を優先できない人々が、木嶋被告に関心を抱いたのではないでしょうか」
法廷は理想の自分を演じる舞台だが、もちろん木嶋被告は犯罪者だ。3件の殺人については依然、否認しているものの、結婚の約束を武器に金品を騙し取ったという詐欺罪については、その一部を認めている。にもかかわらず、一般の女性が被告の様子に惹かれてしまうのは、彼女の“演技性”ゆえだという指摘がある。
東海学院大学人間関係学部教授の長谷川博一さん(臨床心理学)は、木嶋被告は「演技性人格障害ではないか」と見る。
「一般的に、演技性人格障害においては“芝居がかった態度をとる”“性的に挑発的な行動をとる”などがあり、報道を見ている限り、被告にはその兆候が見て取れます。
木嶋被告は、自分が注目を浴びることに関心があるようで、理想の自分を描き、それを演じ切ることで、内部にある外見などのコンプレックスに打ち勝っていこうとしているのだと思います。ですから、彼女は法廷という“舞台”で、理想の自分像を多くの人に見てもらうことで、大きな満足を感じているはずです」
木嶋被告を追いかける女性たちは、いわば彼女の術中にはまってしまったということか。
※女性セブン2012年3月15日号