竹下正己弁護士の法律相談コーナー。今回は「父が契約したらしい墓地の管理料を請求されたのですが」と以下のような質問が寄せられた。
【質問】
父宛てに墓地の管理料の請求が届きました。墓地は父が契約したもので、公園墓地といわれているようです。父が墓地を買ったという話は聞いていませんし、墓地についての知識もありませんので、どのように対応すればいいのかわかりません。どうすればいいでしょうか。アドバイスをください。
【回答】
お父さんは亡くなっているか、判断能力を失っているということでしょうか。後者の場合であれば、契約当事者はお父さんですから、放っておくか、お父さんの意思を忖度して行動することになるのでしょう。まずは墓地経営者に連絡して、契約内容を確認されてはいかがでしょう。きちんとした永代使用契約が締結されており、お父さんが元気なら維持することを望むであろうと思われる場合には、あなたの親孝行の気持ちと管理料の額の兼ね合いになるでしょう。
すでにお父さんが死亡している場合は、誰が権利を引き継いでいるかが先決問題です。墓地の権利は、霊園の中の特定の墓地区画について、墓地経営者から通常は永代で借り受け、墓石などを置いて墳墓として使用する権利です。従って死後誰が引き継いだかを確定する必要があります。この権利は祭祀財産という特別な財産の一つであり、相続のときも普通の相続財産とは違った扱いを受け、民法の遺産相続の制度には該当しないものです。
この祭祀財産は、被相続人がその承継者を指名しなかった場合には、まず慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継するとされ、慣習が明らかでないときは、家庭裁判所が承継者を決めるとされています。そこであなたの場合にもこの考え方で、祭祀を主宰する人物になった人が、永代使用権を引き継いでいるはずということになります。その場合、管理料の支払い義務も引き継ぎます。
管理料を払いたくないときは、永代使用料を返上し、お墓を返す方法もあります。ただし、墓石やお墓に入っている遺骨等の始末をつけて更地にして返すことになり、出費を伴います。
霊園経営者に連絡して、相続や解約の場合の扱いに関する契約条件などを確認してください。
※週刊ポスト2012年3月16日号