3万6000人が参加した東京マラソンは、レース前から“市民ランナーの星”の走りに注目が集まっていた。川内優輝(25)は昨年12月の福岡国際で2時間9分57秒の日本人選手最高位(3位)でゴール、五輪代表の有力候補となっていた。しかし東京では2時間12分51秒で14位に沈み、一転して五輪行きが危ぶまれることになった。
失速の原因は、5キロ、10キロ、25キロ地点でスペシャル(SP)ドリンクを取れなかったことにある。川内はレース後、「給水がうまくいかずに動揺した」と肩を落とした。
スポーツ紙記者がいう。
「自己流でトレーニングを続けている川内選手には、コツを教えてくれるコーチがいない。福岡国際の時も8回のうち2回の給水に失敗した。“川内の弱点は給水”というのは、多くの陸上関係者の知るところです」
マラソン通算5勝、ソウル、バルセロナ五輪で4位の記録を持つ中山竹通氏はこう語る。
「川内君は実業団からライバル視されているのだから、周りを囲まれて(給水所で)身動きが取れなくなることも十分予想された。それに、その程度のアクシデントで動揺していては世界で戦えない」
中山氏の指摘はもっともだろう。しかし、川内は気になる証言を残している。
「ボトルにはゼッケン番号と目印のシールを貼っておいたんですが、見つからなかった。こんなことは初めてでした」
いくら苦手だとはいえ、1回ならまだしも、3回も失敗するなどということがあるのか。おまけに25キロ地点では、外国人のペースメーカーが川内のドリンクボトルを“強奪”する事件も起きていた。
陸上ファンの間でこんな噂が囁かれ始めた。
「市民ランナー・川内の台頭を良く思わない陸連が、故意に給水を失敗させたのではないか」
川内ら招待選手のドリンクを並べる給水テーブルは、一般のボランティアではなく、陸連関係者が担当する。ペースメーカーの招聘選出も陸連が行なっている。テーブルから川内のSPドリンクを“消し去る”ことは十分に可能なのだ。
陸連は「単なるアクシデント。このようなことはよくあることだ」と“工作”を否定する。
※週刊ポスト2012年3月16日号