女性が不調に悩む更年期。実は、女性特有のものではなく、50代で不調になる男性が急増しているという。夫が更年期の不調に悩まされているせいで、そのイライラや落ち込みの影響を近くにいる妻が受けて、夫婦で負のスパイラルにはまりこんでしまうことは多い。家庭内不和に陥る前に、しっかりと治療をすることが肝心だ。
「男性更年期の治療には、女性の更年期同様、ホルモン補充療法が効果的です」
と神田医新クリニックの医師・横山博美さん。血液検査の結果、テストステロンが8.5ピコグラム(1兆分の1グラム)以下の場合は、男性ホルモン注射を打つと症状が改善されることが多いという。
運動療法も有効で、毎日30分以上の散歩は自律神経を整え、腕立て伏せやスクワットなどの筋力トレーニングには男性ホルモンを上昇させる効果もある。また、肥満は男性ホルモンの敵なので、適正体重にダイエットすることも大切だ。
「39~40度のぬるめのお風呂にゆっくりつかり、湯船のなかで睾丸を痛くない程度にもんだり、お風呂を出るときに下半身に冷水をかけるのもいいですね」(横山さん)
こうして夫の更年期が改善されることでメンタル面が安定すれば、同様に更年期に悩む妻の体を気遣ったり、妻の話に耳を傾ける余裕が生まれる可能性も高い。ともに更年期障害に陥り、家庭生活に支障をきたしている夫婦の場合、
「極端ないい方をすれば、夫が治れば妻の更年期治療は半分終わったも同じ。まず妻が夫の更年期に気づいて、夫の症状を改善させること。すると、妻も夫から受けるストレスが減って、症状がずっと楽になるんです」と話すのは、男性更年期外来を開いている大阪大学大学院准教授の石蔵文信さん。
更年期に関係が悪化して離婚し、症状がおさまってから離婚を後悔する夫婦もある。しかし、逆に考えれば、このつらい時期は夫婦の絆を深めるチャンスでもある。
「お互いに症状を聞き合い、手をつないで散歩したり一緒に食事に出かけることも有効です。大いに笑うことも精神面にいい影響をもたらしますから」(横山さん)
男性は仕事モードとオフモードのめりはりをつけ、心と体にゆとりをもつことが大切だという。
「更年期は老化の入り口。これからゆっくり元気に年をとる工夫をすればいいと思うことです」(横山さん)
「更年期でつらいのは私だけ」と思わずに、夫婦で更年期を乗り越えよう。
※女性セブン2012年3月15日号