太陽光発電に期待が集まっている。ソフトバンクの孫正義社長は「仮に全国の休耕田と耕作放棄地(約54万ヘクタール)の2割に太陽光パネルを敷き詰めると、約5000万キロワット、原発50基分を発電することができる」とぶち上げたが、大前研一氏によれば、事はそう簡単ではないという。以下は、大前氏の解説だ。
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1年前の福島第一原発事故で原発見直しの機運が高まり、太陽光発電や風力発電など自然エネルギーが、にわかに注目されるようになった。しかし、これらがうまくいくかといえば、大いに疑問である。
たとえば、ソフトバンクの孫正義社長が派手にぶち上げた、休耕田や耕作放棄地に太陽光パネルを設置してメガソーラー発電地にする「電田プロジェクト」には大きなハードルがある。孫社長は「仮に全国の休耕田と耕作放棄地(約54万ヘクタール)の2割に太陽光パネルを敷き詰めると、約5000万キロワット、原発50基分を発電することができる」と話していたが、事はそう簡単ではない。
太陽光発電の稼働率は全国平均で12%、年間1000時間といわれている。つまり、発電量はお天道様次第なのである。しかし、より本質的な問題は、この電田プロジェクトを実行に移そうとしても、農家がなかなか農地を明け渡さないと思われることだ。
なぜなら農家には、相続税が免除になり、戸別所得補償がもらえ、海外旅行をしても「農業視察」という名目にすれば経費で落とすことができるなど、様々なメリットがあるからだ。
経営耕地面積が10アール以上の農業を営む世帯、または農産物の年間販売金額がわずか15万円以上ある世帯であれば、「農家」としてそれらの権利が認められるのである。だから今や農家の8割以上は兼業農家で、専業農家は総農家数の17%しかいないのだ。
問題は、政府が農家に対する補助金を前年の農産物販売金額に応じてではなく、一律にバラ撒いていることだ。そのせいで、農水省が国内農業保護の錦の御旗にしている食糧安全保障にほとんど寄与しない“なんちゃって農家”が多数を占め、農地の転用も遅々として進まず、休耕田や耕作放棄地のまま固定化されている。
※週刊ポスト2012年3月16日号