連合赤軍事件をモチーフにした社会派漫画『レッド』で第14回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞した官能漫画の巨匠、山本直樹氏。過激な描写も多いが、叙情的なセックス描写に定評がある山本氏が、官能漫画の規制問題について持論を語ってくれた。
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デビューからずっとエロを描いているのは、それ以外のジャンルが苦手だったから。最初はラブコメを出版社に持ち込んだりしていたんだけど、どうも受けが悪く、たまたまエロを描いてみたらスラスラ描けた。皆も「面白い」っていってくれて、「こんなにいいことないな」って思ってね。
僕のセックス描写は、叙情的といわれたりもしますが、筒井康隆とか大江健三郎みたいな文学系の小説、演劇とかが好きな1980年代頃の典型的な漫画マニアだったから、その辺に影響を受けているのかなあ。
当時はエロ同人誌がたくさんあって、今では出版できないような過激な作品があった。「漫画ってこんなとこまで描いてもいいんだ!」ってある種の感動がありましたよ。
ただ、この種の漫画が嫌いな人たちって常にいて、僕らが油断すると規制の声が大きくなってしまう。だけど、下品なもの、猥褻なものなんてなくなりませんよ。猥褻なものがあるから僕らは生まれてくるわけです。
規制派が自分が見たくないという気持ちをそのまま法律にしようとしても、猥褻なものを求める気持ちに蓋はできない。アダルトコミックに年齢制限をかけたり、販売場所を一般図書と分けるようなゾーニング(区分)をすればいいし、実際、現在もやっているわけです。
昔、「自分の描いた漫画を子供に見せられるのか?」って聞かれて「見せるわけないだろ、バカ!」って答えたことがあるけど、なくすのではなく隠すのが大人の役割でしょ。もちろん子供は見つけちゃうんだけどね(笑)。
※週刊ポスト2012年3月16日号