かつて日本中を沸かせた双子の100才、きんさんぎんさん。あれから20年が経ち、ぎんさんの4人の娘たちもいまや平均年齢93才、母譲りのご長寿だ。2月28日――いつもは昼下がりに集まる4姉妹が、この日は早朝から蟹江家(名古屋市南区)に集まっていた。しばらく談笑した後、仏花や線香を手に、歩いて10分ほどのところにある墓地へと向かった。
「蟹江家先祖代々之墓」
そう刻まれた墓に水をかけ、布巾で丁寧に墓の汚れを落としていく。
四女・百合子さん(91才):「おっかさん、みんなで会いに来ましたよ。そちらもお天気いいですかぁ」
五女・美根代さん(89才):「なんだかんだと、うるさくて厳しい母だったけど、あっちに逝って丸11年がたったんだねえ」
4姉妹の母・ぎんさんが、108才の生涯を閉じたのは2001年(平成13年)2月28日のこと。その12回忌の命日、墓前に並んで、てんでにお花とお線香を供えて手のひらを合わせる4姉妹。暫く時間が止まったかのようになった。
三女・千多代さん(94才):「(つむっていた目を開けて)普段はな、あんまし思わんけど、やっぱり4人揃うて手を合わせたら、ちいしゃいころがふあーっと浮かんできて、なんともいえん気持ちになる」
長女・年子さん(98才):「うん、なんとなくなあ、胸が熱くなって…、ホロッとなるぅ。この年になっても、“母”というものを慕う心がそうさせるのかもしれん」
美根代さん「私も、ちょっとなぁ、ホロっときた…」
百合子さん:「けんどにゃあ、墓ん中でおっかさんはきっと、“おみゃあら、まだ娑婆(しゃば)におるのかぁ”いうて、笑ってござるよ」
千多代さん:「うん、笑ってござるな。けんど、こうやって生かされてるからにゃあ、いまは、仲良く笑って、喧嘩しながら、頑張って生きるしかないがね(笑い)」
ぎんさんが眠るお墓の前にたたずんだ姉妹たちは、青く澄みわたった空を見上げて、それぞれの思いを重ね合わせた。
※女性セブン2012年3月22日号