ベストセラー『がんばらない』著者で、諏訪中央病院名誉院長の鎌田實氏は、東日本大震災の被災地支援のため、たびたび現地入りしている。その鎌田氏は、始まった復興事業の先頭を、地元の業者ではなく大手ゼネコンが走ることに疑問を感じるという。以下は、鎌田氏の報告だ。
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日本を悪くしていたのは、土建屋さんと建設関係者だと、ずっと思い込んできた。
1998年当時、公共投資・公共事業費は約15兆円あった。建設関係者は、自分たちの意のままになる政治家を作り出し、政治家も官僚も自分たちが潤うことばかりを考えてこの15兆円に群がっていたのだ。
福祉や医療や年金にお金を回さないから、日本はいつまでたっても住みやすくならないと、僕は批判ばかりしてきた。
いまや、公共事業関係費は約6兆円。当時の半分以下である。その影響で潰れた会社もあるし、建設関係の企業のリストラはどんどん広がっていた。そんな中、3.11の大震災が起こった。
被災地に入って、僕がまざまざと見せつけられたのは、地元建設関係者たちの仕事のパワフルさである。行く先々で様子を聞くにつけ、かつて抱いていた関係者への見方を反省し、変えた。
自衛隊や警察、消防隊が震災のときに大いに貢献した。アメリカ軍は“トモダチ作戦”で、仙台空港のがれき撤去を一気に行なって、空港再開港までこぎつけたといわれた。
しかし、自衛隊や警察が入る前に、まず動いたのは地元の建設業者だったのだ。彼らが命がけで道を開いて、先鞭をつけていったのである。
しかし、始まった復興事業の先頭を走ったのは、地元の業者ではなく、大手ゼネコンである。宮城県・石巻地域のがれき処理作業は、鹿島建設を中心にしたジョイントベンチャー(JV)が落札した。
経済ジャーナリストの荻原博子さんとお会いしたとき、彼女は怒っていた。
「多くの事業を大手ゼネコンに持っていかれている。地元は多くの苦労を背負わされているだけ。これでは地元の経済が良くはならない」
3.11以後、地域のためにと、地域に尽くしてきた地元の業者は、泣いているという。
※週刊ポスト2012年3月16日号