1月1日、福島原発から放出された放射性物質を除染する『放射性物質汚染対処特別措置法』が施行され、国の責任による除染作業がスタートした。
この背後に、「除染利権」を狙う大手ゼネコンと地元の建設業者の「受注争奪戦」が勃発している。
本格除染の始まる昨年秋には、国による除染モデル事業として、「日本原子力研究開発機構」の進める除染作業を、鹿島、大成建設、大林組のJV(ジョイントベンチャー)が合計約81億円で契約済みだ。
大手ゼネコンは同時期に、同機構や日本原子力学会、電力会社で作る財団などとともに、「環境放射能除染学会」を設立し、新たな除染技術の開発でも受注を狙っている。
「受注実績を作っておけば、これからの受注で優位に立てる。除染後も土壌の改良など、派生ビジネスが期待できる」(大手ゼネコン幹部)
地方自治体レベルでも大手ゼネコンが有利に展開している。すでに福島県の事業では大成建設が約1億5000万円、福島市でも大林組が約2億2000万円で、市街地の一部の除染事業を受託した。
地元の土木建築業者も指をくわえて見ているわけではない。福島市や南相馬市などで、市内の建設業者や造園、土木業者が集まって、組合を設立して対抗する動きが広まっている。「南相馬市復興事業協同組合」の担当者はこう話す。
「南相馬市は竹中工務店JVが受注したが、入札条件で組合加盟の32社と共同事業を行なうことになっている。単なる下請けではなく、同等の立場と条件で仕事ができるように交渉していく」
一方で、同じように組合を立ち上げた福島市では、地元業者が苦戦を強いられている。
「法律ができてから、個人宅から民民で受注を受けることができなくなり、在京の大手ゼネコンに流れてしまっている。地元の雇用に繋がらない」(市内の建設業者)
※週刊ポスト2012年3月16日号