就活で辛いのは学生ばかりではない。人事の採用担当者も学生の確保など気遣うことが多く、疲労は心身ともにピークに達する。作家・人材コンサルタントの常見陽平氏が就活の裏側「採用担当者地獄絵巻」を紹介する。
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3月です。学生たちに聞くと、エントリーシートの締め切りや、面接が連続して起こっているようです。Twitterなどでも「また、“祈られ”た。くそ!」という、つぶやきを見かけることが増えてきました。
ちなみに、祈られるとは、「落ちる」という意味です。不合格通知のメールに「今後の健闘をお祈りします」などと書かれていることから、いつの間にか就活スラングとして定着しました。
祈られる度に「就活のバカヤロー!」と叫びたくなり、採用担当者を呪ってやりたくなる人もいることでしょう。でも、ちょっと待ってください。就活ですが、学生だけでなく、採用担当者も大変なのです・・・。
株式会社ジョブウェブとレジェンダ・コーポレーション株式会社が共同で行った『2013年新卒 採用担当者意識調査(12月度)』によると、66.0%の企業が前年よりも苦戦すると予想。
前年と比較すると21.0ポイント増加していました。倫理憲章の見直しにより、採用広報期間が短くなったこと、これにより学生が自社に気づいてくれないのではないか、企業や仕事を選ぶ視点が甘くなるのではないかなどが懸念されています。
就活中の関西学院大学総合政策学部の3回生によると「明らかに企業の人事からは焦りが感じられますね」とのこと。「必ずウチに電話して欲しい」「明日の説明会には必ず来て欲しい」などの、まさにラブコールがいっぱいだとか。
今の時期は、採用担当者は大忙しです。人事部は全社の残業や休日出勤を減らすことをすすめるものですが、採用担当者は今、残業と休日出勤だらけです。ある大手企業の若手採用担当者は私に対してこうボヤきました。
「全社の残業に対する締め付けがきつい中、上司から絶対に45時間以上つけるなって言われているんです。実際80時間は残業しているのに…。ただでさえ、ブラック企業だと疑われているのに。間違いなくブラック部署ですよ」
そんな採用担当者は社内でも嫌われものです。「会社説明会にご協力を!」「面接官になってください!」など、忙しい現場の社員にお願いすることも多い上、「採用した社員がいまいちだったぞ、くそ!」と文句を言われるわけです。
人事部の中でもセクションで仕事はまるっきりわかれ、仕事上の接点も少ないのですが、「人事」として見られるので「ボーナス安かったぞ、くそ!」「希望外の異動になった!」ことを根に持っていることも。採用担当の責任ではないのですけどね。中には採用担当が現場に異動する度に、いじめることが伝統芸になっている企業もありますよ。
また、採用担当者は学生から見られていて、ちょっとした粗相でネット炎上することも。「少しツッコミを入れたら、ネットで圧迫面接だ!って書かれたんです。そんなこと言われるなら、何も質問できないでしょうが!」採用担当者は泣いています。
私も合同企業説明会で講演する機会があるのですが、ここの関係者控え室は野戦病院のようです。ブースではかっこよく説明する採用担当者も、ここではぐったりとお昼寝しています。滋養強壮剤も飲みまくりです。でも、「午前中には20人と接触。うち、早慶、MARCHは8人でした」など、報告を続けなければなりません。
そんな中、ハメをはずしたくなる、いや、ハメたくなることもあるようですが、忙しすぎてデートもままならず、すっかり夫婦の関係がなくなった中年なみに夜の営みも盆暮れ状態。プロ野球の開幕戦が近づいているのに、夜のボールとバット事情はいまいちというわけです。
思わず出張先で遊びたくなるものの、キャバクラやデリヘルには学生バイトも多く、面が割れている採用担当者はそうもいかないとか。いざキャバクラというわけにも行かないわけですな。
いや、私も採用担当者になったばかりの頃に思わず仲間数人と一緒に下北沢の1時間2000円キャバクラに行ったところ、会社にバレて糾弾されました。
学生の皆さん、採用担当者の皆さんも大変です。逆に言うと、今年、彼らは弱り気味、焦り気味なのでチャンスとも言えるのですが。彼らの気持ちもわかってあげてください!